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「健康経営優良法人2026」過去最多2.6万法人超を認定|量から質へ、ウェルビーイング経営の新潮流

「健康経営優良法人2026」過去最多2.6万法人超を認定|量から質へ、ウェルビーイング経営の新潮流

従業員の健康は、いまや企業経営の「コスト」ではなく「投資」として語られる時代になりました。経済産業省と日本健康会議は2026年3月9日、「健康経営優良法人2026」の認定法人を発表しました。第10回目となる今回は認定数が過去最多を更新し、制度の評価軸も大きく進化しています。「病気を防ぐ」から「心身ともに良い状態を保つ」へ——健康経営がウェルビーイング経営へと深化していく流れを読み解きます。

過去最多2.6万法人超が認定|10年間で広がった「健康経営」

経済産業省は、健康長寿社会の実現に向けた取り組みの一つとして、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践する「健康経営」を推進しています。
2026年3月9日に発表された「健康経営優良法人2026」では、日本健康会議により大規模法人部門に3,765法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加)、中小規模法人部門に23,085法人(上位500法人には「ブライト500」、501から1500法人には「ネクストブライト1000」の冠を付加)が認定されました。
第10回目の認定となる今回は、昨年度(健康経営優良法人2025)の大規模法人部門3,400法人・中小規模法人部門19,796法人に対し、両部門ともに大幅な増加となりました。
同日、経済産業省は東京証券取引所と共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を選ぶ「健康経営銘柄2026」も発表し、第12回となる今回は28業種から44社を選定しました。
健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、2016年度に経済産業省が創設し、日本健康会議が認定する顕彰制度です。
制度は2016年度に始まり、今回で10年目の節目を迎えたことになります。

認定の前提となる健康経営度調査への回答法人数も年々増加しており、特に日経平均株価を構成する225銘柄の8割を超える企業が回答するなど、各業界のリーディングカンパニーの多くが経営戦略の一つとして健康経営に取り組んでいます。
かつては一部の先進企業にとどまっていた取り組みが、いまや日本の産業界全体の標準へと変わりつつあることを示す数字といえます。

「病気予防」から「心の土台づくり」へ|2026年版の3つの変化

今回の認定から、評価の軸が明確にシフトしています。注目すべき変化点を整理します。

変化①|メンタルヘルスの考え方が「対策」から「増進」へ

注目すべき変化点のひとつが、メンタルヘルス関連項目の表現変更です。令和7年度(健康経営優良法人2026)では、従来の「メンタルヘルス対策」から、「心の健康保持・増進に関する取り組み」という用語へと変更されました。これは、心の健康を病気予防としてではなく、持続的に良好な状態を保つものとして位置づける、よりポジティブな認識の転換を表しています。

実際の設問内容にも、相談体制の整備だけでなく、心理的安全性や職場環境の視点が強調されています。
「問題が起きてから対処する」のではなく、「そもそも健康でいられる環境をつくる」という発想への転換は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」が示す精神とも重なります。

変化②|従業員の枠を超えた「ステークホルダー全体」への配慮

これまで健康経営の評価は、主に「自社の従業員」に向けた施策が中心でした。しかし令和7年度(健康経営優良法人2026)では、その枠を超え「ステークホルダー全体」への配慮がより明確に求められるようになりました。ここでいうステークホルダーとは、サプライチェーン(仕入先・委託先など)や家族、地域社会など、企業を取り巻く広範な関係者を指します。従業員の家族も参加可能な健康イベントの実施や、取引先企業に対する健康経営の啓発支援などが、評価項目として新たに重視されています。

企業の健康経営が「内」だけでなく「外」にも広がっていくことで、地域コミュニティ全体のウェルビーイング向上につながるという視点は、社会的インパクトを重視する現代の企業経営のあり方とも一致しています。

変化③|育児・介護期も働き続けられる「ライフステージ対応」

令和7年度(健康経営優良法人2026)の認定基準では「家庭と仕事の両立」という視点が新たに加わりました。特に、育児期や介護期にある従業員が働きやすい制度・風土を持つ企業は、人的資本への投資姿勢が高く評価される傾向にあります。認定要件では、短時間勤務や在宅勤務制度、フレックス制度の整備はもちろん、メンタルケアやキャリア支援、同僚の理解促進に向けた社内研修の実施など、ソフト面での取り組みも評価対象です。

少子高齢化が進む日本においては、育児や介護を担いながら働く人々が職場に安心して居続けられる環境づくりが、人材確保と企業の持続可能性に直結します。「健康経営」がライフステージ支援を包含していく流れは、今後さらに加速すると考えられます。

自治体も動く|地域全体のウェルビーイングを底上げする取り組み

健康・ウェルビーイングへの取り組みは、企業だけでなく自治体にも広がっています。

熊本県では独自の幸福度指標や住民参加型の政策形成といった取り組みを、平成24年度から進めてきたとされています。熊本県民の幸福度は、震災や豪雨といった困難な状況に直面しても安定した数値を維持しているとされており、幸福度を可視化することで住民の意識が向上し、地域への誇りや期待感の高まりに貢献していると考えられています。
福井県は「全47都道府県幸福度ランキング」で複数年にわたり上位を継続しているという見方があり、さらなるウェルビーイング向上への取り組みを実施してきたとされています。福井県は優れた成果をあげた職員を評価したり、チャレンジを後押ししたりする制度が豊富で、結果として良質な県民サービスが提供でき、さらなるウェルビーイング向上につながっているとされています。
富山県では、ウェルビーイングを県の成長戦略の中心に位置付け、富山県独自のウェルビーイング指標を設けたり、ウェルビーイングに関する特設サイトを作成し、ウェルビーイング診断や富山県で活動されている人々のウェルビーイングに関するアクションを紹介したりしているとされています。

こうした自治体の動きと企業の健康経営が連携することで、地域の産業団体を巻き込む広がりも生まれています。

健康経営は「コスト」か「投資」か|問われる本質

ウェルビーイングは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」に組み込まれています。この目標は、あらゆる年齢の人々が健康的に生活できる社会の実現を目指すものであり、身体的・精神的な健康を包括しています。企業や自治体はSDGsの達成に向けて取り組む中で、従業員や地域住民のウェルビーイングを向上させる施策を強化しています。

認定法人数の増加は歓迎すべきことですが、一方で「認定を取ること」が目的化しないよう注意も必要です。
経済産業省は、各施策の偏差値等を記載した評価結果(フィードバックシート)を回答法人に送付し、自社の取り組みの改善に活用できるよう、他社との比較を通じたさらなる取り組みの促進や、ステークホルダーに対する情報開示を促しています。
数値を「公表する」ことへの圧力が、質の向上を促す仕組みとして機能していくことが期待されます。

日本では少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に直面し、働き方の多様化が進みました。
そのような構造的変化の中で、従業員の健康に投資することは、企業の生産性・採用力・社会的信頼を高める上で不可欠な経営戦略となっています。「健康経営」という言葉が定着して10年、いまその中身が「ウェルビーイング」という広い概念へとアップデートされようとしています。

まとめ|「健康な社会」は一人ひとりの職場から

「健康経営優良法人2026」の認定数過去最多という事実は、日本社会が「働く人の健康」を真剣に考え始めた証左といえるでしょう。しかし重要なのは認定の数ではなく、職場の中で一人ひとりが「心身ともに良い状態」でいられるかどうかです。

企業に勤める方も、就職・転職を考えている方も、「健康経営優良法人」や「健康経営銘柄」の認定状況は企業を選ぶ一つの指標になり得ます。また自治体のウェルビーイング指標も、住む場所を選ぶ際や地域の課題を考える際のヒントになるはずです。健康な職場と健康なまちが重なるとき、社会全体のウェルビーイングが少しずつ底上げされていきます。

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