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SSBJ基準が初の改正|GHG排出開示のルールが見直された理由と企業への影響

SSBJ基準が初の改正|GHG排出開示のルールが見直された理由と企業への影響

2026年3月13日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2025年に公表したサステナビリティ開示基準について、初の改正を公表しました。
改正の対象は温室効果ガス(GHG)排出に関する開示ルールで、日本の大手上場企業が近く義務化対応を迫られる開示制度の根幹が動いたことになります。「SSBJ基準とは何か」「今回の改正で何が変わるのか」「企業はどう準備すればよいのか」――この記事ではそれらをわかりやすく解説します。

SSBJ基準とは何か

国際的なサステナビリティ(ESG)開示の潮流を受けて、日本では2025年3月5日にサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が「サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)」を公表しました。この動きを受けて、日本でも国際基準と整合的な企業開示を進めるため、企業会計基準委員会(ASBJ)の下にSSBJが設置されています。目的は、国際的な開示基準を踏まえながら、日本企業の実務や制度に適した「日本版IFRS S基準」を策定することです。
SSBJ基準は、将来的に有価証券報告書における法定開示の基盤となることが予定されています。これまで任意開示が中心だったサステナビリティ情報に対し、財務諸表と同等の信頼性と比較可能性を持たせることがこの基準の核心です。

より具体的には、2025年3月5日、SSBJは我が国最初のサステナビリティ開示基準となる「サステナビリティ開示基準の適用」「一般開示」「気候関連開示」の3つの基準をそれぞれ最終化しました。
気候関連開示基準では、スコープ1、2、3の絶対総量の開示が要請されており、スコープ3についてはカテゴリ別の開示が必要となります。

今回の改正|何が変わったのか

SSBJは、2026年3月10日開催の第65回サステナビリティ基準委員会において、「温室効果ガス排出の開示に対する改正」として、次の3つの基準の改正を公表することについて決議し、2026年3月13日に公表しました。改正サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」、改正サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」、改正サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」の3つです。

今回の改正が行われた背景はどこにあるのでしょうか。
本改正基準は、ISSBより2025年12月11日に「温室効果ガス排出の開示に対する修正―IFRS S2号に対する修正」が公表されたことを受け、SSBJ基準における取扱いについて検討を重ねた結果として公表するものです。
これらの改正は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2025年12月11日に公表したIFRS S2号「気候関連開示」の修正に対応するもので、2025年3月に公表されたSSBJ基準の初めての改正となります。

ファイナンスド・エミッションの扱いが明確化

今回の改正の中でも注目すべき点の一つが、スコープ3カテゴリー15に関わるファイナンスド・エミッション(金融機関の貸出・投融資に由来する排出量)の取り扱いの明確化です。
2025年基準では、スコープ3の温室効果ガス排出について、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示することが要求されています。しかし、ISSB基準の適用上の課題として、スコープ3カテゴリー15に含めるべき排出が明確ではなく、特にデリバティブ等の排出がスコープ3カテゴリー15として開示する範囲に含まれるかが不明瞭であるとの課題が識別されていました。この課題への対応として、今回の改正では、ファイナンスド・エミッションはスコープ3カテゴリー15の全部または一部を構成することを明確化しています。

「制度の大枠は変わらない」が継続対応が鍵

今回の改正は制度の大枠を変えるものではなく、GHG排出量の開示に関する取扱いの調整・明確化が中心です。
一方で、今回の改正により、SSBJ基準は一度対応すれば終わりではなく、継続的に更新される制度であることが明確になりました。
企業にとっては、基準への「単発対応」だけでなく、継続的にアップデートを追いかける体制づくりが重要になります。

義務化スケジュール|どの企業が・いつから対象になるのか

SSBJ基準の義務化は、企業規模(時価総額)に応じて段階的に進む予定です。

有価証券報告書等で開示するサステナビリティ情報について、東京証券取引所プライム市場上場会社のうち平均時価総額1兆円以上の企業には、SSBJ基準を適用します。また、温室効果ガス排出量のスコープ3に関する定量情報については、セーフハーバー・ルールが適用されます。改正案のうちサステナビリティ情報に関しては、時価総額が3兆円以上の企業は2027年3月31日以後に終了する事業年度、3兆円未満1兆円以上の企業は2028年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等への適用が予定されています。

さらに先を見越すと、2028年3月期から時価総額1兆円以上、2029年3月期から時価総額5000億円以上の企業にも義務化の対象範囲が広がり、2030年代にはプライム市場に上場する全企業に適用が義務化される方向で議論が進んでいます。

また、保証(第三者による検証)の仕組みも整備されつつあります。具体的な時期や内容については現在も検討中とされています。

サプライチェーン全体への波及

SSBJ基準の影響は、有価証券報告書を作成する大企業だけにとどまりません。
気候変動は最重要テーマとなっており、テーマ別基準として独立した基準となっています。その中ではバリューチェーンも踏まえた開示が求められており、温室効果ガス(GHG)排出量のスコープ3開示も義務化されているため、適用対象企業のみではなく、そのサプライチェーンにも広く影響が及ぶことが予想されます。

たとえば大手製造業がスコープ3のカテゴリー別開示を求められれば、部品・原材料を供給する中小企業にも「自社のGHG排出量データを提供してほしい」という要請が来る可能性があります。SSBJ基準は、直接の適用対象でない企業にとっても無関係ではないのです。

今後の見通し|ISSB改訂との連動が続く

今回の改正は、2025年12月11日にISSBが公表したIFRS S2号「気候関連開示」の修正を受け、国際基準との整合性を維持するために行われたものです。SSBJ基準はISSB基準をベースとしているため、今後もISSB側の改訂に応じたアップデートが継続的に行われると考えられます。

日本のサステナビリティ開示基準は、国際的な動向と連動して刷新されていきます。今回の初改正は、その始まりに過ぎないといえるでしょう。

まとめ|企業が今すぐ準備できること

SSBJによる今回の改正は、GHG排出開示のルールをより精緻化・明確化するものであり、基準の大枠は維持されています。しかし、適用義務化のスケジュールが着実に迫る中、企業が今から取り組めることは少なくありません。

まずはスコープ1・2・3の現状把握と算定プロセスの確認、そして自社がどの時期に適用対象となるかのスケジュール確認が第一歩です。基準は今後も継続的に更新される見通しのため、「制度を一度理解して終わり」ではなく、変化を継続的に追いかける体制を社内に整えることが、今後の企業価値を守る上で重要になってくるでしょう。

  • 記事を書いたライター
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