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LIFESTYLE

アムステルダム発!廃棄食材を活かすレストラン「Instock(インストック)」のサステナブルな挑戦|今の姿と日本で参考にできる実践

オランダのアムステルダムで生まれた「Instock(インストック)」は、スーパーマーケットで売れ残った食材などを使って料理を出す、廃棄食材を活かすレストランとして世界に知られるようになりました。始まりは、大手スーパー「アルバート・ハイン」で働いていた従業員たちが、店で毎日捨てられていく食品に疑問を持ったことです。その後、Instockは事業の形を変え、現在は飲食業向けに余剰食材を届ける卸売の会社として活動しています。

この記事では、Instockの誕生から現在までを順に確認したうえで、「結局、日本ではどう参考にできるのか」を整理します。10月は食品ロス削減月間にあたります。レストランの話にとどめず、日本の最新の食品ロス統計や、飲食店と消費者それぞれが取れる行動まで見ていきます。

この記事で学べること

  • Instockが誕生した経緯と、廃棄食材をおいしい料理に変える工夫
  • レストランから卸売へ事業が変わった、Instockの現在の姿
  • 2024年度の日本の食品ロス推計から見える、今の課題
  • 日本の飲食店と消費者が、今日から取れる具体的な行動

Instockが生まれた経緯|スーパーで見た「捨てられる食品」から

Instockの出発点は、レストランを作りたいという思いよりも、現場で見た廃棄への違和感でした。ここでは、創業の背景と、アルバート・ハインとの関係を確認します。

小売の現場で働く人が感じた疑問

Instockを立ち上げたのは、アルバート・ハインの店舗で働いていたメンバーです。オランダの放送局NOSが2016年に報じた記事では、共同創業者の一人としてフレーケ・ヴァンニムヴェゲン(Freke van Nimwegen)氏の名前が挙がっています。創業者たちはいずれも、同社で店長補佐のような立場を経験していたと紹介されています。

店では、賞味期限が近い、仕入れすぎて在庫が余った、見た目がよくないといった理由で、まだ食べられる食品が毎日のように捨てられていました。一人ひとりの判断は間違っていなくても、積み重なると大量の廃棄になります。創業者たちは、その現場を知っていたからこそ、仕組みで変えようと考えました。

社内コンテストから、ポップアップ、常設店へ

Instockは社内のビジネスコンテストで提案した「廃棄食材を使ったレストラン」の案が評価され、ポップアップ形式で始まったと紹介されています。その後、アムステルダムに常設店ができ、2016年の報道の時点では、アムステルダム、ハーグに続いてユトレヒトにも店が開く予定でした。

調達の方法も具体的に報じられています。創業者たちは、かつての勤務先であるアルバート・ハインの店舗から、余った食材を台車で回収していました。NOSの記事によれば、一皿の料理の約8割は、本来なら捨てられていた食材でできていたとされます。

料理と運営の工夫|その日届いた食材から献立を決める

Instockの面白さは、廃棄食材を使う理念だけではありません。献立の決め方や加工の工夫、地域への働きかけまで含めて、一つの仕組みになっていました。

毎日変わるメニューと、保存のための加工

通常のレストランは、先にメニューを決めて食材を仕入れます。Instockはその逆で、その日に回収できた食材を見てから、シェフが夜のメニューを考えます。同じ料理が毎日出るわけではないため、シェフには柔軟さと即興性が求められます。

日持ちしない食材は、ピクルスにしたり、乾燥させてトマトパウダーのような調味料にしたりして、使い切る工夫が紹介されています。食材を無理に使い切るのではなく、保存と加工で価値を保つ発想です。ビールやグラノーラなど、余剰食材から作る加工品も手がけてきました。

食べる人に伝えるという役割

食品ロスは、店や工場だけで起きる問題ではありません。家庭からの廃棄も大きな割合を占めるため、Instockは食べる人への働きかけも重視してきました。店内のデザインを通じて廃棄食材の問題をさりげなく伝え、料理教室や教育プログラムも行っていたと紹介されています。

ここで大切なのは、「廃棄食材を使っています」と大きく掲げて訴えるのではなく、まず料理としておいしいと感じてもらう順番にしていた点です。メッセージを押しつけず、体験を先に置く設計は、日本の飲食店が食品ロスの取り組みを伝えるときにも参考になります。

今のInstockはどうなっているのか|レストランから卸売へ

ここが、検索で出てくる古い紹介記事と最も異なる点です。Instockは現在、レストランではなく、食材の流通を担う会社になっています。

コロナ禍での転換

オランダの公益財団DOENの紹介記事によると、Instockは3つのレストランまで広がりましたが、新型コロナウイルスのロックダウンの時期に、事業の方向を見直しました。レストランを増やすより、食材を提供する側と使う側をつなぐ役割を担うほうが、より多くの食品を救えると判断したためです。

その土台になったのが、アムステルダム近郊に設けた「Food Rescue Center(フードレスキューセンター)」です。DOENの記事では、2019年にDOENの支援で開設されたと説明されています。農家や食品会社から出る余剰食材を集め、飲食店などに販売する循環型の卸売事業として動いています。

現在の規模と顧客

現在の公式サイトでは、Instockは「InstockMarket」という名称の、持続可能な飲食業向け卸売業者として紹介されています。農家、生産者、食品会社など200社以上と連携し、野菜、果物、パン、肉、魚、乳製品、乾物など幅広い商品を扱っています。注文は翌日配送で、オランダ全土とベルギー・フランドル地方の一部が対象です。

DOENの記事には、700人ほどのシェフが利用していることや、扱う食品の最低20%をアムステルダムのフードバンクなどに寄付することも書かれています。公式サイトには大手の給食・サービス事業者やホテル、企業などが取引先として並び、B Corp認証も取得しています。これらの数字は各サイトの記載時点のものです。

「レストランをやめた」は失敗なのか

レストランが減ったことを見て、取り組みが行き詰まったと受け取る人もいるかもしれません。ただ、公式の説明を読むかぎり、これは撤退ではなく役割の組み替えです。小さな一店舗で救える量には限りがありますが、卸売なら一度に多くの飲食店へ食材を届けられます。

日本の読者にとっての示唆は、「社会課題に取り組む形は一つではない」ということです。最初の店が理念を伝える入口になり、後から仕組みへ広がる流れは、スタートアップや地域の事業でもよく見られます。

よくある誤解|廃棄食材のレストランは何が違うのか

Instockの話をすると、「ごみを食べさせるのか」「安さを売りにした店なのか」といった受け止め方をされることがあります。誤解されやすい点を3つ確認します。

「廃棄」と「食べられない」は同じではない

Instockが使うのは、腐った食材ではありません。食べられるのに、規格や在庫、見た目、期限の都合で売り場から外れた食材です。食品ロスとは、まさにこの「食べられるのに捨てられる食品」を指します。安全性を確認したうえで使う前提があるからこそ、料理として提供できます。

味を妥協する店ではない

余剰食材で作る料理は、食材を選べない分だけ、シェフの技術に左右されます。Instockが評価を得たのは、廃棄食材という理念だけでなく、料理としての満足度があったからでもあります。「もったいないから食べる」ではなく、「おいしいから選ぶ」と思ってもらえることが、取り組みを広げる条件になります。

一店舗の努力だけで解決する話ではない

もう一つの誤解は、レストランが頑張れば食品ロスが減るという見方です。Instockも、スーパー、生産者、卸、飲食店、食べる人という流れの全体に関わる必要があったからこそ、卸売へと広がりました。個人の努力に頼るだけでなく、食材の流れそのものを変える視点が欠かせません。

日本の食品ロスの現在地|2024年度の最新推計

海外の事例を日本に引きつけて考えるために、国内の最新データを確認します。

2024年度は461万トン

農林水産省と環境省が2026年6月30日に公表した推計では、2024年度の日本の食品ロスは約461万トンでした。前年度の464万トンから、わずかに減っています。消費者庁の公表ページによれば、内訳は次のとおりです。

  • 事業系(食品製造・卸・小売・外食など)は約237万トンで、前年度の231万トンから増加
  • 家庭系は約224万トンで、前年度の233万トンから減少

家庭は減り、事業は増えた

注目したいのは、家庭系が約9万トン減った一方で、事業系が約6万トン増えている点です。全体の数字は小さく動いただけでも、中身は異なる動きをしています。事業者側の取り組みが、まだ十分に追いついていないことがうかがえます。

この数字は、飲食店や小売店が余剰食材をどう扱うかが、今も大きな課題だということを示しています。Instockが小売と飲食店の間に入ったように、日本でも、事業者同士が余った食材を無駄にしない流れを作る意味は大きいといえます。

10月は食品ロス削減月間

日本では、食品ロス削減推進法に基づき、10月が食品ロス削減月間、10月30日が食品ロス削減の日とされています。秋は新米や果物、行楽の外食と、食べ物と向き合う機会が増える季節です。普段の食卓や外食の習慣を見直す、ちょうどよい時期といえます。

日本で参考にできる実践|飲食店・自治体・民間サービス

Instockの考え方は、日本でも形を変えて広がっています。ここでは、複数の取り組みを横に並べて、それぞれの特徴を見ます。

食べ残しの持ち帰り「mottECO(モッテコ)」

飲食店で出た食べ残しを、消費者が自己責任で持ち帰る行為を、環境省・消費者庁・農林水産省が「mottECO」と名づけて推進しています。2024年12月には、消費者庁と厚生労働省が「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」を公表しました。事業者が法律上と衛生上で気をつける点が整理されています。

2025年度には、環境省の「mottECO導入モデル事業」に、30団体で構成するmottECO普及コンソーシアムと株式会社クラダシが連携した事業が採択されました。2025年7月には東京でイベントが開かれ、関係省庁の講演や事業者の事例発表、もったいないメニューの試食コーナーなどが行われています。

フードシェアリングのサービス

売れ残りそうな商品や料理を、値引きして必要な人に届けるフードシェアリングも定着しています。KURADASHI(クラダシ)のように期限が近い商品を割安で販売する通販サービスや、TABETEのように飲食店の余った料理をテイクアウトで受け取るサービスがあり、自治体の案内ページでも紹介されています。

これらは、Instockがやっていた「余剰食材を、必要とする人へつなぐ」ことを、日本の暮らしに合わせて仕組みにしたものといえます。飲食店にとっては廃棄コストの削減になり、消費者にとっては手頃な価格で買えるという利点があります。

Instockと日本の取り組みの違い

最後に、Instockと日本の取り組みの違いを整理します。Instockは余剰食材を調達して料理や卸売にする、流通側からの仕組みです。日本のmottECOは食べた後の残りを減らす、消費者側からの仕組みです。フードシェアリングは、その中間で売れ残りを減らす役割を担います。

どれか一つで食品ロスはなくなりません。それぞれが異なる段階で働くため、組み合わせて考えることが現実的です。

読者が今日からできること|食べる側・つくる側の選び方

仕組みの話を、一人ひとりの行動に置き換えます。「全部やる」のではなく、自分の立場で一つ選べば十分です。

外食する人

注文の前に、自分が食べきれる量かを一度考えます。食べきれなかった場合は、お店がmottECOに対応していないかを確認し、持ち帰れる場合は自己責任で、早めに食べ切ります。持ち帰りに対応していない店で無理にお願いする必要はありません。

食材を買う人

賞味期限が近い商品や、見た目に少し難のある野菜を、値引きされているときに選んでみてください。すぐ使う予定なら、期限が近い商品を選ぶことは、店の廃棄を減らすことにもつながります。家庭系の食品ロスが減っているのは、こうした日々の選択の積み重ねも一因と考えられます。

店を営む人、働く人

余った食材を、仕込みの工夫で別の料理に変えられないかを考えます。ピクルスや乾燥など、Instockが行った加工は、多くの厨房で試せる方法です。それでも余る場合は、フードシェアリングのサービスや、フードバンクへの提供を検討するとよいでしょう。

まとめ

Instockは、スーパーで食品が捨てられる現場を知る人たちが、廃棄食材を使ったレストランを立ち上げたことから始まりました。その後、コロナ禍を経てレストランから飲食業向けの卸売へと軸を移し、今は200社以上と連携して余剰食材を流通させています。形は変わっても、「食べられる食品を、食べられるうちに必要な人へ届ける」という軸は一貫しています。

日本でも、2024年度の食品ロスは約461万トンで、家庭系が減る一方で事業系は増えました。mottECOやフードシェアリングなど、立場に応じて使える選択肢は広がっています。できることは人によって異なりますが、まず1つだけ、外食や買い物のときに試してみてください。

  • Instockは、スーパーの廃棄食材を使うレストランとして始まり、現在は飲食業向けの卸売事業として活動している
  • 「レストランが減った」ことは撤退ではなく、より多くの食品を救うための役割の組み替えと読み取れる
  • 日本の2024年度の食品ロスは約461万トンで、家庭系は減り、事業系は増えた
  • mottECOやフードシェアリングなど、日本でも余剰食材と食べ残しを減らす選択肢が広がっている
  • 外食、買い物、仕込みのどこか1つから始めれば十分で、組み合わせで効果が広がる

参考文献

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