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ENVIRONMENT

ごみを電気に変える技術の「いま」|廃棄物発電・バイオマス発電が迎える転換点

毎日、家庭や企業から出るごみ。燃やして処分するだけだったそのごみが、電気を生み出す資源になっています。廃棄物発電やバイオマス発電は、廃棄物処理と再生可能エネルギー生産を同時に実現できる技術として注目されてきました。しかし今、この分野は大きな転換点を迎えています。2026年度からは輸入バイオマスを燃料とする大規模発電所がFIT/FIP(固定価格買取制度/フィード・イン・プレミアム制度)の対象外となり、政策の方向性が大きく変わろうとしています。何が変わり、これからどこへ向かうのか。基礎から最新動向まで解説します。

廃棄物発電・バイオマス発電とはどんな技術か

バイオマスとは、木くずや間伐材、可燃性ごみ、家畜の糞尿など、動植物に由来する生物資源の総称です。バイオマス発電はこれらの資源を「直接燃焼」したり「ガス化」したりして発電する仕組みで、なかでも清掃工場でごみを燃やしたときに出る熱を使って発電する方法を「廃棄物発電(ごみ発電)」と呼びます。
バイオマスを燃焼させるときにCO2は排出されますが、その燃料となる植物は成長過程でCO2を吸収していることから、カーボンニュートラルな再生可能エネルギーの一つとして位置づけられています。これまで捨てられるだけだった廃棄物や家畜の排泄物、木材などを燃料として再利用することで、地域活性化や廃棄物量の削減といったメリットも生まれます。

発電の主な方式は大きく3つです。
直接燃焼では、木材や農業残渣をボイラーで燃焼させて蒸気を生成し、その蒸気でタービンを回して発電します。ガス化は、バイオマスを高温で酸素や水蒸気と反応させて可燃性ガスを生成し、ガスタービンで燃焼させて発電する方法です。メタン発酵は、動物廃棄物や都市ごみを微生物の力で分解してメタンガスを生成し、ガスエンジンやガスタービンで燃焼させて発電します。

FIT制度とバイオマス発電の歩み

2012年に施行されたFIT(固定価格買取制度)のなかで、バイオマスの事業化が推進されてきました。FITにおけるバイオマスの調達区分は、メタン発酵ガス化発電(下水汚泥・家畜糞尿)、未利用木材燃焼発電、一般木材(含パームヤシ)燃焼発電、廃棄物燃焼発電(木質以外の一般廃棄物・下水汚泥)、リサイクル木材燃焼発電に分類され、買取期間はいずれも20年間とされました。
2012年のFIT開始以来、バイオマス発電の稼働容量は急増し、2024年末時点でFIT/FIP制度により計729カ所・578万kWのバイオマス発電所が稼働、さらに1,061カ所・834万kWが認定されています。稼働容量の75%、認定容量の78%は輸入バイオマスを主な燃料とする一般木質バイオマスの区分となっています。

しかし、FITによる導入拡大は当初描いた「地産地消」のモデルとは大きく乖離した形で進みました。
もともと間伐材などを燃料として活用する地産地消型モデルを想定していましたが、国内林業の停滞で調達が進まず、アブラヤシ(パームヤシ)やヤシ殻など安価な輸入材への依存が強まり、早々に変質してしまいました。ウクライナ侵攻に伴うロシア産木材の輸入減やパーム油の価格高騰が追い打ちをかけた結果、大型の木質バイオマス発電所やパーム油バイオマス発電所で採算悪化が生じています。

2026年度からの大きな政策転換

こうした状況を受け、経済産業省の調達価格等算定委員会は政策の方向性を大きく転換しました。
経済産業省は再生可能エネルギー支援の範囲を初めて縮小し、2026年度から輸入木材などを使うバイオマス発電をFIT/FIPの対象から外す方針を打ち出しました。輸入価格の高騰で新規参入が途絶え、将来的な発電コストも太陽光の4倍近くに高止まりするのが背景にあります。
具体的には、出力1万kW以上で輸入木材を使う案件(一般木質等)と、パーム油などの液体燃料を使う案件(全規模)の新規支援をやめるものです。一方、国内の自治体が地元で出た廃材や生ごみなどを活用した案件については引き続き支援されます。

環境団体からもこの政策転換を歓迎する声が上がっています。
輸入木質バイオマスを燃焼した際のCO2排出量は石炭火力より多いという指摘や、エネルギー効率の低さから燃やした木材の多くが排熱として捨てられているという問題が指摘されてきました。さらにバイオマス発電のコストの多くが燃料費で、輸入燃料のための賦課金が海外に流出しているという指摘もあります。

一方で、既にFIT/FIP認定済みのバイオマス発電所のうち輸入燃料に依存する一般木質(1万kW以上)と液体燃料については、今回の制度変更は新規認定にとどまり、既存の認定発電所はFIT/FIPによる買取期間の20年間が終了するまで引き続き輸入・燃焼が続くことになります。

廃棄物発電が持つ可能性

政策が転換するいま、あらためて注目されているのが廃棄物発電です。
一般廃棄物発電は、建設費や維持管理費が廃棄物処理費で賄われるため、すべての費用を売電収入で賄うバイオマス発電より事業性に優れると考えられます。

さらに技術面でも最前線の取り組みが進んでいます。
東京二十三区清掃一部事務組合(清掃一組)やカナデビアなど焼却炉メーカーが連携し、品川清掃工場でCO2回収技術の実証を実施しているとされています。ごみの燃焼に酸素を使って排ガスを再循環させるのが特徴で、焼却過程でCO2濃度を高め、清掃工場で発生したCO2の高割合の回収が可能になるとされており、2026年度にCO2回収装置を組み込んだ新プラントの稼働が予定されているという見方があります。

廃棄物発電は今後の制度においても地域密着型の再エネとして位置づけられています。

「地産地消」型モデルが目指す未来

廃棄物を有効活用することで、エコでクリーンな「循環型社会」の構築につながり、地域活性化・地域雇用活性化も期待されています。

輸入依存からの脱却と並行して、国内では地域資源を生かした取り組みが広がりつつあります。岡山県真庭市の「真庭バイオマス発電所」は、地域内の未利用間伐材や製材端材を燃料として活用し、さらに発電時に発生する熱を近隣の施設に供給する「熱電併給(コージェネレーション)」システムを導入してエネルギーを無駄なく活用しているとされています。
こうした地域密着・地産地消のモデルこそが、制度転換後のバイオマス・廃棄物発電が目指すべき方向性として評価されています。

FIT期間が終了すれば多くの未利用木質バイオマス発電所は事業継続が困難になると考えられますが、地域の未利用材の生産・流通システムを維持するための受け皿として、すでに存在する公共インフラである一般廃棄物発電施設の活用が選択肢の一つとして考えられています。

廃棄物発電は、エネルギー生産と廃棄物処理を同時に実現できる地域の基盤として、政策転換後もますますその役割が期待される分野です。

まとめ|ごみが電力に変わる、これからの廃棄物発電

2026年度のFIT/FIP制度変更により、輸入バイオマス依存型の大型発電所は新規支援から外れ、地産地消型の廃棄物発電や国内未利用材の活用に政策の重点が移ります。
地域のごみを地域のエネルギーに変える廃棄物発電は、CO2回収技術の実証も進み、循環型社会と脱炭素の両立を支えるインフラとして、今後も発展が期待されています。私たちにできることとしては、ごみの分別やリサイクルへの協力、地域のバイオマスや廃棄物発電の取り組みへの関心を持つことなどが挙げられます。ごみから生まれる電気が、持続可能な社会づくりの一翼を担う未来へ——技術と政策の転換点を、この機会に知っていただければ幸いです。

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