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CSR

児童労働問題とサプライチェーン|日本企業と私たちに何ができるか

Photo by 2H Media on Unsplash

チョコレートやスマートフォン、Tシャツ。私たちの生活を支える製品の原材料が、どこで誰の手によって作られているのか、意識したことはあるでしょうか。国際労働機関(ILO)とユニセフの推計によれば、2020年時点で世界の5〜17歳の子どものうち約1億6000万人が児童労働に従事しているとされ、そのうち約7900万人は健康や安全を脅かす危険有害労働に従事しているといいます。この記事では、児童労働がサプライチェーンのどこで起きやすいのか、日本の制度はどう対応しているのか、そして私たち一人ひとりが今日から取れる行動を、数字を根拠にしながら整理していきます。

世界の児童労働はどれくらい深刻なのか

ILOとユニセフが2021年に公表した共同報告書では、世界の児童労働人口は2016年の推計1億5200万人から2020年には1億6000万人へと、4年間で約840万人増加したと報告されています。長年減少傾向にあった児童労働の数値が増加に転じたのは2000年以降で初めてのことであり、背景には貧困の深刻化に加えて新型コロナウイルス感染症の流行に伴う家計の悪化があると指摘されています。

産業別に見ると、児童労働のうち約7割は農業分野で発生しているとされます。カカオやコーヒー、綿花といった一次産品の生産現場は、家族単位の零細農業が中心であるがゆえに、労働基準監督の目が届きにくいという構造的な課題を抱えています。地域別ではサブサハラ・アフリカが最も深刻とされ、貧困率の高さや教育アクセスの制約が、子どもを労働市場へ押し出す要因になっていると報告されています。

サプライチェーンのどこに児童労働のリスクが潜んでいるのか

児童労働は特定の国や業界だけの問題ではありませんが、原材料の調達段階でリスクが集中しやすい品目がいくつか知られています。ここでは代表的な3つの調達分野を比較しながら見ていきます。

カカオ産業(西アフリカ)

米国労働省の委託を受けたシカゴ大学NORCの調査(2018〜2019年の農家調査、2020年公表)では、世界のカカオ生産量の6割以上を占めるコートジボワールとガーナの2カ国だけで、推計156万人の子どもがカカオ生産に関わる児童労働に従事していると報告されました。この数値は2008〜09年の調査時点と比べて減少しておらず、業界団体による是正プログラムが広がる一方で、根本的な貧困問題の解決には時間がかかっている実態を示しています。

コバルト鉱山(コンゴ民主共和国)

電気自動車やスマートフォンのバッテリーに使われるコバルトは、世界の産出量の7割前後がコンゴ民主共和国に集中しているとされます。国際人権団体の調査では、南部の鉱山地帯で数万人規模の子どもが手掘り鉱山(アルティザナル・マイニング)に関わっているとの報告もあり〔要確認〕、正確な人数の把握自体が難しい点も課題として指摘されています。

綿花・アパレル産業

綿花の収穫は労働集約的な作業であるため、歴史的に児童労働リスクが高い分野とされてきました。米国労働省が隔年で公表している「児童労働・強制労働によって生産された物品リスト」には、150品目前後、80カ国近くの物品が掲載されており、綿花や縫製品も継続的に含まれています。一方でウズベキスタンのように、国際的な監視プログラムを通じて組織的な児童労働がほぼ解消されたと報告される事例もあり、制度的な監視と是正プログラムの効果を示す事例として参考になります。

日本の企業と法制度はどう向き合っているのか

日本国内では、外務省が2020年10月に「ビジネスと人権に関する行動計画(2020-2025)」を策定し、企業に対して人権デューデリジェンスの実施を促してきました。さらに経済産業省と外務省は2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表し、児童労働や強制労働を含む人権リスクの特定・防止・是正のプロセスを、規模を問わず日本企業に求める方針を示しています。

このガイドラインは法的な罰則を伴う規制ではなく努力を促す性格のものですが、欧州連合が2024年に採択した企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)のように、海外では取引先企業にも人権対応を義務づける法制化が進んでいます。日本企業にとっても、輸出先や取引先の要求水準に合わせてサプライチェーン全体を点検する必要性は、今後さらに高まっていくと考えられます。

学生団体の現場で見えてきた誤解と気づき

筆者はこれまで、フェアトレードやエシカル消費をテーマに活動する学生団体のプロジェクトを50件以上サポートしてきました。児童労働をテーマにした啓発イベントを企画する学生たちと話していると、繰り返し出てくる誤解のパターンがあります。ひとつは「特定の国の商品を買わなければ解決する」という発想です。しかし児童労働の背景には現地の貧困や教育機会の不足という構造的な要因があり、単純な不買運動はかえって現地の家計収入を失わせ、状況を悪化させる可能性がある点は、活動を始める前に必ず共有するようにしています。

もうひとつよく見られるのは、認証マークさえ付いていれば問題がすべて解決済みだと捉えてしまう誤解です。フェアトレード認証やレインフォレスト・アライアンス認証は児童労働リスクを下げる仕組みとして重要ですが、認証はプロセスを保証するものであり、100%のリスクゼロを保証するものではありません。学生団体の発表を見ていても、認証の有無を「答え」として提示するより、認証がどのような監査の仕組みで支えられているかまで説明できているチームの方が、聴衆の理解が深まる傾向を感じています。

消費者として今日からできる具体的な行動

個人の消費行動だけで児童労働をなくすことはできませんが、需要側からの働きかけは企業のサプライチェーン点検を後押しする力になります。具体的には次のような行動が挙げられます。

  • 購入前にフェアトレードやレインフォレスト・アライアンスなど第三者認証の有無を確認する
  • 企業の公式サイトでサステナビリティ報告書や人権方針が公開されているかを見る
  • 気になる企業の問い合わせ窓口に、原材料調達に関する質問を送ってみる
  • 児童労働の是正に取り組むNGOの活動状況を定期的にチェックする

まず今日からできる一歩として、次にチョコレートやコーヒーを買うときに、パッケージにフェアトレード認証やレインフォレスト・アライアンス認証のマークが付いているかを1つだけ確認してみてください。答えを探すよりも、確認する習慣を持つこと自体が、サプライチェーンへの関心を継続させる第一歩になります。

まとめ

児童労働は遠い国の問題ではなく、私たちが日常的に手にする製品のサプライチェーンの先で今も起きている課題です。ILOとユニセフの推計が示す通り、世界的な減少傾向は2016年以降止まっており、農業分野を中心に構造的な貧困が背景にあります。日本でも経済産業省・外務省のガイドラインを起点に、企業のデューデリジェンスへの期待は高まっています。数字を知ること、認証の仕組みを理解すること、そして小さな確認行動を積み重ねることが、遠回りのようで最も着実な関わり方だと感じています。

  • 世界の児童労働人口は約1億6000万人と推計され、2016年以降増加に転じている
  • 児童労働の約7割は農業分野で発生し、カカオ・綿花・コバルトなどが特にリスクの高い調達品目とされる
  • 日本では2022年に経済産業省・外務省がサプライチェーン人権デューデリジェンスのガイドラインを策定した
  • 認証マークの確認や企業への問い合わせなど、消費者にも具体的にできる行動がある

本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・国際機関の公開情報をもとに作成しています。

参考文献

  • 国際労働機関(ILO)「Child labour」(統計・推計データ、2021年公表分含む、ilo.org/topics/child-labour
  • 経済産業省・外務省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(2022年)
  • 米国労働省 国際労働局(ILAB)「List of Goods Produced by Child Labor or Forced Labor」(dol.gov/agencies/ilab

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