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GRIスタンダードと日本企業|対照表の読み方と2027年までの変化

Photo by Croissant on Unsplash

企業のサステナビリティレポートや統合報告書を開くと、巻末に「GRIスタンダード対照表」という細かい表が付いていることがあります。私はフェアトレード商品のラベルを見るとき、認証マークの隣にある「何をどこまで確認した印なのか」の説明を読むのが習慣になっています。GRIの対照表も同じで、読み方が分かると、報告書の言葉が実態に近いのかを確かめる手がかりになります。この記事では、日本企業がGRIスタンダードをどう使っているのかを整理し、2026年から2027年にかけて変わる点と、消費者や学生が対照表を読むときの見方をまとめます。

この記事で学べること

  • GRIスタンダードの構成と、日本企業の報告書での使われ方
  • 2026年・2027年に適用が始まる新しい項目別スタンダード
  • 日本の法定開示(SSBJ基準)とGRIの役割の違い
  • 企業の対照表を読むときに確認したい3つのポイント

日本企業はGRIスタンダードをどう使っているのか

GRIスタンダードの基本構造

GRIは、企業などが経済・環境・人への影響を比較可能な形で報告するための国際的な基準を公開している組織です。基準づくりは独立した委員会であるGSSB(グローバル・サステナビリティ・スタンダード・ボード)が担っています。スタンダードは、すべての組織に共通する「ユニバーサル・スタンダード」、業種ごとの「セクター別スタンダード」、個別テーマを扱う「項目別スタンダード」の3層で構成されています。

共通スタンダードのGRI 1、GRI 2、GRI 3は2021年10月に改訂され、2023年1月1日以降の報告から適用されています。日本語版は2022年10月13日に公表されました。GRI 2は組織概要・ガバナンス・方針といった一般開示事項、GRI 3はマテリアルな項目の決め方を扱います。

報告書の巻末に載る「対照表」の役割

日本では、IHIやCKDのように、自社サイトにGRIスタンダード対照表のページを設けている企業があります。対照表は、GRIの各開示事項が、報告書や公式サイトのどこに書かれているかを示す索引です。私はこの表を、商品の原材料表示のように使っています。企業が自分で書いた物語ではなく、決められた項目に沿って並べた情報だからです。

ただし、対照表があること自体が「環境や人権への取り組みが優れている」ことの証明にはなりません。表は「報告の形式」を示すもので、取り組みの成果や水準を保証するものではないからです。この区別を押さえておくと、報告書を読むときに過剰な期待も過剰な疑いも避けられます。

2026年と2027年に変わる項目別スタンダード

生物多様性は2026年1月から新基準に

2024年1月に公表された「GRI 101 生物多様性 2024」は、2026年1月1日から正式に適用されています。従来のGRI 304(生物多様性)に代わる基準で、国連の昆明・モントリオール生物多様性枠組み、SBTN、TNFDなどの国際的な動きを土台にしています。日本語版は2024年6月21日に公表されました。

私が見落としやすいと感じるのは、「生物多様性の取り組み」という言葉が、植樹や寄付のような個別活動を指す場合と、事業が自然に与える影響を測って管理することを指す場合の両方で使われている点です。新基準は後者の考え方に立っているため、報告書の側にも、活動紹介から影響の把握へ書き方を変える動きが出てくると考えられます。

気候変動とエネルギーは2027年1月から

2025年に公表された「GRI 102 気候変動 2025」と「GRI 103 エネルギー 2025」は、2027年1月1日に適用が始まります。GRI 102は移行計画や適応計画、温室効果ガスの排出削減目標、スコープ1・2・3の排出量などの開示を求めます。従来のGRI 305(排出量)、GRI 302(エネルギー)などに置き換わる位置づけです。日本語版はどちらも2025年10月9日に公表されています。

つまり、2027年以降に出る報告書では、対照表の中身が「305-1」のような旧番号から「102-」「103-」の新番号へ移っていきます。旧番号と新番号が混在する移行期は、自分が読んでいる報告書がどちらの版に基づくのかを確かめる必要があります。

GRIと日本の法定開示(SSBJ基準)の違い

想定している読み手が異なる

日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が国際的な投資家向け基準であるISSB基準に整合した国内基準を策定しています。報道によると、金融庁の報告書では、有価証券報告書でSSBJ基準に基づく開示を2027年3月期から、時価総額3兆円以上のプライム上場企業を皮切りに段階的に義務づける方針が示されています。

この制度は、気候変動などが企業の財務にどう影響するかを投資家に伝えることが主な目的です。一方GRIは、企業が経済・環境・人にどんな影響を与えているかを、投資家に限らない幅広い読み手に伝える枠組みで、法的な義務のない自主的な基準です。「財務への影響」と「社会や環境への影響」という向きの違いが、両者の最も大きな差だと整理できます。

どちらかではなく、役割を分けて読む

上場企業にとっては、法定開示としてSSBJ基準に対応しつつ、人権や地域社会、サプライチェーンへの影響のようにステークホルダーが知りたい情報はGRIで補う使い分けが現実的です。読む側も、有価証券報告書は投資家向けの財務に関わる開示、GRI対照表付きのサステナビリティレポートは影響の開示と捉えれば、情報の探し先に迷いにくくなります。

GRI対照表を読むときに見られる3つのつまずき

ここからは、対照表を実際に読むときに迷いやすい点を、読み手の側から3つに整理します。体験に基づく調査結果ではなく、報告書を読み比べるときに押さえておきたい視点としてまとめたものです。

「準拠」と「参照」の区別が付かない

GRIスタンダードの使い方には、要件をすべて満たす「GRIスタンダードに準拠して」と、一部を参考にする「GRIスタンダードを参照して」の2通りがあります。対照表の冒頭付近にある「利用声明」には、どちらなのかが書かれています。ここを見ずに表だけを眺めると、全項目に対応しているような印象を受けてしまいます。

「P.45」だけで理由の記載がない

対照表の開示箇所の欄が空欄だったり、「非該当」とだけ書かれていたりすることがあります。GRIでは、開示しない項目には省略の理由を示すことが求められます。理由の説明があるかどうかは、報告の姿勢を知る手がかりになります。私は、開示している項目の数よりも、開示していない項目にどう向き合っているかのほうを先に見るようにしています。

マテリアルな項目の選び方が見えない

GRI 3は、どの項目を重要(マテリアル)と判断したかを、その決め方とともに示すことを求めています。報告書に「重要課題」が並んでいても、どんな基準で、誰の意見を聞いて選んだのかが書かれていなければ、対照表との対応が見えません。選定のプロセスと、対照表で報告されている項目がつながっているかを確認すると、見栄えの良い言葉と実質を見分けやすくなります。

今日から試せる1アクション

気になる企業のサステナビリティレポートを1冊選び、巻末の対照表から「利用声明」の一文だけを探してみてください。「準拠」なのか「参照」なのかが分かれば、その報告書をどの程度の厳密さで読めばよいかが決まります。表の全体を読み込む必要はありません。私も最初は、対照表の項目の多さに圧倒されて途中で閉じてしまいました。最初の1文だけに絞ると、続けやすくなります。

まとめ

GRIスタンダードは、企業が社会や環境に与える影響を比較可能な形で報告するための国際基準で、日本企業の多くが報告書の巻末にある対照表の形で使っています。2026年1月には生物多様性のGRI 101、2027年1月には気候変動のGRI 102とエネルギーのGRI 103が適用され、対照表の中身も移行期を迎えます。

日本では、投資家向けのSSBJ基準による法定開示が段階的に始まる見通しです。財務への影響を伝える法定開示と、社会・環境への影響を伝えるGRIは、役割が異なります。どちらが優れているかではなく、読み手として目的に応じて使い分けるのが現実的です。

対照表は「利用声明」「省略の理由」「マテリアルな項目の選定」の3点から読むと、情報の質が見えてきます。まずは1社、利用声明の一文だけ探してみてください。

  • GRIスタンダードは共通・セクター別・項目別の3層構成で、共通スタンダードは2023年1月から適用されている
  • 生物多様性のGRI 101は2026年1月、気候変動のGRI 102とエネルギーのGRI 103は2027年1月に適用が始まる
  • SSBJ基準は投資家向けの財務への影響、GRIは社会・環境への影響の開示という役割の違いがある
  • 対照表は「利用声明」「省略の理由」「マテリアルな項目の選定」の3点から読むと見極めやすい

参考文献

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