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CSR

SSBJ基準とは|3つの開示基準と2027年義務化スケジュールをわかりやすく解説

Photo by Juls P on Unsplash

「SSBJ基準という言葉を耳にするようになったけれど、何がどう変わるのかよくわからない」——そんな声を、企業のサステナビリティ担当者からよく聞きます。 2025年3月5日、日本で初めてのサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)が正式に公表されました。 2026年2月には内閣府令も改正され、大企業を中心に義務化の足音が確実に近づいています。

この記事では、SSBJ基準の全体像・3つの構成要素・義務化のスケジュールと対応のポイントを、実務に携わる担当者の視点から整理します。「うちには関係ない」と思っている中堅企業の方にも、サプライチェーン開示の波が届く理由までお伝えします。

SSBJとは何か、そもそも誰が決めているのか

SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)は、日本語で「サステナビリティ基準委員会」と呼ばれる民間団体です。2022年7月、IFRS財団傘下のISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の設立を受け、日本版の基準を策定する組織として発足しました。 金融庁や経済産業省など公的機関が直接定めるのではなく、専門家による独立した委員会が基準を開発し、それを法令が採用する仕組みになっています。

「なぜ民間団体が基準を作るの?」と疑問に思う方も多いはずです。国際会計基準(IFRS)と同じ構造で、独立性と専門性を担保しながら国際基準との整合を取るためです。 SSBJ基準はISSB基準(IFRS S1・S2)を日本の実情に合わせて翻案しており、グローバルで活動する日本企業が海外投資家へ開示する際の比較可能性を確保することを意図しています。

SSBJ基準の3つの構成要素

SSBJ基準は、「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3つで構成されています。 それぞれの役割を順に確認しましょう。

①サステナビリティ開示ユニバーサル基準(適用基準)

サステナビリティ関連財務情報の開示に関する基本的な事項を定めています。具体的には、情報の記載場所、報告のタイミング、比較情報の提示、誤謬の訂正など、開示全般に関わる基本的な要求事項が含まれています。

現時点では、気候変動以外のテーマ——たとえば人的資本や生物多様性——に関する個別基準がまだ存在しないため、こうした領域でサステナビリティ情報を開示しようとする企業はユニバーサル基準の定めをまず確認することになります。

②一般開示基準(テーマ別基準第1号)

一般開示基準では、ガバナンスや戦略、リスク管理などの基本的な開示項目が規定されています。 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の推奨開示項目と同じ構造を持つため、すでにTCFD対応を進めてきた企業には比較的なじみやすい枠組みです。

「TCFDをやっているから大丈夫」という誤解はよくあります。ただ、SSBJ基準はTCFDより具体的な要求事項が多く、定量情報や将来見通しの記載が求められる場面も増えます。対応済み・対応中の企業でも、ギャップ分析は必要です。

③気候関連開示基準(テーマ別基準第2号)

気候関連開示基準では、気候変動に特化した情報開示が必要です。 Scope1・Scope2の温室効果ガス排出量、気候シナリオ分析、移行リスク・物理的リスクの評価などが求められ、とくに「気候関連のリスクと機会が財務にどう影響するか」を具体的に示すことが核心です。

SSBJは2025年12月15日に、温室効果ガス排出の開示に対する改正案として3つの公開草案を公表しており、GHG排出に関する要求事項の精緻化が進んでいます。 最終化後は実務への影響を再度確認する必要があります。

義務化はいつから?段階的スケジュールを整理する

「義務化は遠い先のこと」と思っていませんか。 2026年2月の内閣府令改正により、比較可能性の向上の観点から、2027年3月期より、時価総額が一定規模以上の東京証券取引所プライム市場上場会社に対し、SSBJ基準に従った情報開示が義務化されました。 時価総額に応じて段階的に適用されます。

  • 2026年3月期:任意適用開始(早期取り組み企業は先行対応が可能)
  • 2027年3月期:時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業が義務化対象
  • 2028年3月期:時価総額1兆円以上3兆円未満の企業が追加
  • 2029年3月期:時価総額5,000億円以上1兆円未満の企業が追加
  • それ以下の時価総額の企業:義務化時期は現時点で未定

さらに、開示情報の信頼性を担保する「保証(アシュアランス)」も段階的に強化されます。 気候関連開示の適用開始と同時にScope1・2排出量などに限定的保証が求められ、2年後には全開示情報に拡大、4年後には合理的保証が要求される見込みです。2030年7月1日以降には保証水準がさらに引き上げられる方向で議論が進んでいます。 (金融庁、2026年4月公表資料より)

「時価総額が3兆円未満だからまだ余裕がある」という判断は危うい面があります。大手取引先がSSBJ基準の義務対象になれば、サプライチェーン全体のデータ収集——とくにScope3排出量の算定——に中小・中堅企業も巻き込まれる可能性が高まります。

4つの柱で何を開示するのか

SSBJ基準の一般開示基準・気候関連開示基準の共通骨格となる「4つの柱」の中身を把握しておくと、社内の準備に何が必要かが見えやすくなります。

ガバナンス

取締役会・経営陣がサステナビリティのリスクと機会をどのように監督・管理しているかを開示します。「誰が責任を持つか」「どの会議体で議論されているか」を具体的に示す必要があるため、社内の委員会設計や取締役会へのレポートラインを整備することが先決です。

戦略

サステナビリティのリスクと機会が事業モデルや財務計画にどう影響するかを示します。気候関連では「1.5℃シナリオ」「4℃シナリオ」といった複数の気候シナリオを用いて、売上・コスト・資産価値への影響を定量的に評価することが求められます。

リスク管理

サステナビリティ関連のリスクをどのように特定・評価・管理しているかのプロセスを説明します。既存の企業リスク管理(ERM)フレームワークとの統合が推奨されており、「ESGは別のシステムで管理」という縦割り体制は見直しを迫られます。

指標および目標

Scope1・2の温室効果ガス排出量に加え、Scope3の開示についても要求事項が含まれます。 目標は定性的なものだけでなく、定量的かつ時間軸を明示したものが求められます。

ISSBやTCFDとの違いはどこか

「SSBJ・ISSB・TCFDの違いがわからない」という声は、社会課題に取り組む学生団体でも企業担当者からも共通してよく出てきます。シンプルに整理すると次のようになります。

  • ISSB(国際サステナビリティ基準審議会):IFRS財団が設置した国際的な基準策定機関。IFRS S1・S2が主な成果物。
  • TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース):G20の要請でFSBが設置した任意開示フレームワーク。SSBJ・ISSBのベースとなった概念設計を提供したが、2023年に役割を終えISSBへ移管。
  • SSBJ(サステナビリティ基準委員会):ISSB基準を日本の開示制度(有価証券報告書など)に適用できる形に翻案し、法的拘束力のある日本基準として整備する機関。

つまり、TCFDは「どう考えるか」の枠組み、ISSBは「国際的に何を開示するか」の基準、SSBJは「日本で有価証券報告書に何を書くか」の具体的なルール——という位置づけです。TCFDの任意開示から、SSBJによる法的義務化へとステージが変わったことを押さえておくことが大切です。

企業担当者が今日から始められること

「まず何から手をつければいいか」と迷う方に向けて、公開情報から見えてくる対応のパターンを3つに整理できます。

まず多いのが、ギャップ分析から始めるパターンです。すでにTCFD対応やGHG排出量算定を行っている企業が、SSBJ基準の要求事項と現状の開示内容を突き合わせて不足項目を洗い出す。いわば「棚卸し」から入るアプローチで、現実的な出発点です。

次に、データ基盤を先行整備するパターンです。開示を支える数値——Scope1・2の排出量、エネルギー使用量、人的資本指標など——が社内に分散している企業では、情報収集の仕組みを先につくっておくと、基準が確定した後の動きが速くなります。

3つ目は、サプライヤーへの働きかけを先行させるパターンです。Scope3排出量の算定にはサプライチェーン全体のデータが必要で、取引先の協力なしには数値が揃いません。義務化が迫る大手企業ほど、すでにサプライヤーへの情報提供依頼を始めています。自社がサプライヤー側に立つ場合、求められるデータ種別を早めに把握しておくと対応コストを抑えられます。

まず今日試せることは1つ——SSBJの公式サイト(ssb-j.jp)で公表されている「SSBJハンドブック」(2025年4月30日公表)を確認し、自社の現在地を一度ざっくり把握してみることです。専門用語が並ぶ資料ですが、ハンドブックはポイントが整理されており、担当者が最初に手に取る資料として設計されています。

まとめ|SSBJ基準で押さえておきたいポイント

SSBJ基準は「大企業だけの話」ではなく、サプライチェーンを通じて多くの企業の開示実務に影響を与える転換点です。制度の全体像を把握した上で、自社に必要な準備を段階的に進めることが、今後の信頼確保につながります。

  • SSBJは2022年7月設立の民間委員会。2025年3月に日本初のサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)を公表した
  • 基準は「ユニバーサル基準」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3本柱で構成される
  • 義務化は2027年3月期から段階的にスタート(時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業から)。2026年2月に内閣府令が改正済み
  • 開示の骨格はTCFDと同じ「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標」の4つの柱
  • TCFDは任意開示フレームワーク、SSBJは法的義務を伴う日本版基準——段階が異なることを押さえる
  • Scope3開示のニーズからサプライチェーン全体に波及するため、中堅・中小企業も早期に自社の対応を把握しておくことが重要

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