企業の脱炭素化が急速に進む中、「SBTi」という言葉を耳にすることが増えています。しかし、SBTiが具体的に何なのか、なぜ企業にとって重要なのかを理解している人はまだ多くはありません。本記事では、SBTiの意味から企業がそれを活用する理由まで、わかりやすく解説します。
SBTiとは?基本的な意味を押さえる
SBTiは2015年にWWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブ
です。「SBTi」は「Science Based Targets initiative」の頭文字を取った略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標イニシアティブ」と訳されます。
簡潔に言えば、SBTiは企業と金融機関が最新の気候科学に沿って野心的な排出削減目標を設定できるようにする国際的な団体
です。企業が自分たちの削減目標を決める際に「科学的な根拠」を持つことを支援し、その目標が妥当であると認定する仕組みを提供しています。
背景|パリ協定と地球温暖化対策の必要性
最新の科学によれば、気候危機の被害を最小限に抑えるためには、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5度に抑えることが重要であることがわかっています。2021年に開催されたCOP26ではこの「1.5度目標」が事実上世界の目標となりました。
1.5度目標の達成には、世界全体でCO2を2030年に半減、2050年に実質ゼロにすることが必要ですが、この目標の達成には、温室効果ガスの主要な排出者である企業が確実に排出削減を進めていくことが極めて重要
です。ただし、個々の企業にとって「具体的にどれだけ削減すべきか」を判断することは簡単ではありません。そこで登場したのがSBTiです。
SBTとSBTiの違い|用語を正確に理解する
SBTiについて学ぶ際、「SBT」と「SBTi」の違いを理解することが大切です。
SBTは日本語で「科学的知見に基づいた目標」または「科学的知見に整合した目標」と訳されます。つまり、SBTは個々の企業が設定する削減目標そのもので、SBTiはその目標設定を支援・認定する国際機関を指しています。
企業がSBTを設定する意義
SBTiは企業が具体的にどれだけの量の温室効果ガスをいつまでに削減しなければいけないのか、科学的知見に基づいて目標を立てられるようなガイダンスを作りました。企業がSBTを設定することで得られるメリットは複数あります。
まず、投資家からの信頼が高まります。
SBTは最新の気候科学に基づいた目標設定のため、信頼性が高く投資家の注目を集めます。また、顧客やサプライチェーンパートナーとの関係でも、科学的な根拠をもった目標は説得力があります。さらに、SBTiは企業がSBTを設定することが当然となり、経済と環境が調和する社会を創り上げることを目標としています。
SBT認定を受けるプロセス
企業がSBT認定を取得するには、一定の手順を踏む必要があります。
1.アカウントの作成、2.コミットメント(任意)、3.GHG排出量の算定/目標の策定、4.目標の提出/申請費用の支払い、5.審査、6.認定/公表、7.定期的な報告/目標の確認の順で進めます。
重要な点として、現在では「1.5度基準」(基準年から5年~10年を目標年とする短期目標で、スコープ1,2は気温上昇を1.5度以下に、スコープ3では2度より十分低く抑える目標)のみで認定をうけることができます。より野心的な目標が求められているのです。
日本企業の参加状況
日本企業では2015年10月にソニーが最初の認定を取得しました。その後、多くの日本企業がSBT認定を取得しており、日本は世界的にもSBT先進国とされています。大手製造業から小規模企業まで、幅広い業種の企業がこの枠組みに参加しています。
中小企業向けの簡易な仕組み
SBTi参加には大企業と中小企業で異なるプロセスが用意されています。
SBTiで定義されている中小企業は、従業員数500人未満の非子会社、独立企業、または公的機関です。中小企業は、標準コミットメント・レターに署名する必要はなく、特に中小企業向けに設計され、中小企業専用に指定された中小企業向け科学に基づく目標設定フォームを使用すべきです。こうした配慮により、規模の小さい企業でも参加しやすい環境が整備されています。
企業が取るべき次のステップ
SBTiへの参加を検討している企業や、すでに削減目標を掲げている企業にとって、SBT認定の取得は経営戦略の重要な一部です。科学的な根拠をもった目標を掲げることで、投資家からの評価が高まるだけでなく、従業員や顧客からの信頼も得やすくなります。また、サプライチェーン全体での脱炭素化推進にも貢献できます。
気候危機は待ってくれません。企業規模を問わず、一歩を踏み出すことが求められています。

