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テクノロジーが農業の「担い手不足」を変える|スマート農業最前線と、2026年の転換点

テクノロジーが農業の「担い手不足」を変える|スマート農業最前線と、2026年の転換点

農業を支える人が、急速に減っています。ロボット、AI、ドローン——テクノロジーを農業に組み合わせる「スマート農業」は、その危機への処方箋として期待されています。農林水産省が2026年3月に公表した「スマート農業をめぐる情勢について」が示す現状と、いま動き出した法制度の中身を読み解きます。

農業従事者の「4分の1」という衝撃的な試算

農林水産省のデータによると、2023年時点での基幹的農業従事者数は116万人ですが、そのうち20年後に農業の中心となると考えられる50代以下はわずか20%の23.8万人にとどまっているとされており、今後20年間で基幹的農業従事者数は現在の約4分の1にまで減少しかねない状況にあります。

日本の農業が直面しているのは、生産技術の問題よりも先に、「農業を担う人がいなくなる」という構造的な危機です。
従来の人手を必要とする生産方式のままでは、農業の持続的発展や食料の安定供給を確保できない状況が迫っており、そこで期待されているのがスマート農業技術です。
スマート農業は、農林水産省によると「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」と定義されています。省力化や生産品質の向上などが見込まれ、農業の労働力不足や国内の食料自給率の改善などの課題解決に役立つと考えられています。

2024年10月施行「スマート農業技術活用促進法」とは

こうした背景のもと、2024年6月に公布、同年10月に施行されたのが「スマート農業技術活用促進法」です。農業者の減少など農業を取り巻く環境変化に対応すべく、スマート農業技術の活用を促進し、生産性向上を図るための法律です。
同法は、生産・開発に関する二つの計画認定制度を設け、メリット措置や予算の優遇措置によりスマート農業技術の活用を推進することとしており、将来の農業者の急速な減少においても農業の持続的な発展に寄与することが期待されています。

具体的には、農業者が申請できる「生産方式革新実施計画」と、技術開発事業者が申請できる「開発供給実施計画」の2種類があります。
「生産方式革新事業活動」の促進にあたっては、作付面積等のおおむね過半で取り組み、実施期間(原則5年以内)で5%以上の労働生産性の向上の目標を設定することなどが申請要件の基本事項として明らかにされています。

計画の認定を受けた事業者には手厚い支援が用意されています。
投資促進税制として、「生産方式革新実施計画」認定農業者には特別償却が適用され、機械装置・器具備品は32%(一部25%)、建物等の構築物は16%の特別償却率で導入当初の税負担を軽減できます。また、日本政策金融公庫から償還期限25年以内・据置期間5年以内の長期低利融資を活用することができます。

最初の認定第1弾が示すもの

法律の施行から約3か月が経過した2025年1月、農林水産省は、昨年10月に運用を開始した同法に基づく生産方式革新実施計画の認定第1弾を行いました。株式会社おしの農場、株式会社山正から申請のあった計画について、いずれも要件を満たすものと認められたとして認定が行われたとされています。

認定を受けた取り組みの一例として、水稲の栽培において、栽培管理システムから得られたほ場ごとの地力・収量等のデータを他の生産者と共有し、その分析結果を翌年度のほ場ごとの最適な施肥設計に活用する事例があります。また、農業用ドローンによる可変施肥を利用することで、省力的にほ場ごとの施肥作業を実施し、収益性を向上させています。

現場で広がる技術の実像

スマート農業と一口に言っても、その技術は多岐にわたります。

離れた場所にいながら、圃場の温度や湿度、照度、田の水位などのデータをセンサーや画像で確認するセンシング・モニタリングも広がっています。取得したデータをAIで分析し収穫量を予測するなどの、さらなる活用の可能性も高まってきています。
ドローンについては、農薬散布用途に限っても2019年には約1,900台だったとされる販売台数が翌年には約5,600台と約3倍に増加したとされており(農林水産省調べ)、農薬散布以外にも多様な用途での活用が広がっています。

スタートアップの参入も活発で、農林水産省が公表している「農業新技術製品・サービス集」や「スマート農業技術カタログ」で紹介されているサービスや技術は多岐にわたっており、農業技術として開発されてこなかった技術についても、農作業の効率化等に貢献できる技術であれば「スマート農業技術」として扱われる可能性があるとされています。

「担い手以外の農業者」も視野に

農林水産省が2026年3月に公表した「スマート農業をめぐる情勢について」では、今後の推進方向も示されています。
農業者や民間事業者、大学、地方公共団体等の参画のもと、導入可能なスマート農業技術が経営に与える効果や成功・失敗事例の分析、技術の客観的な評価など、農業者がスマート農業技術の活用を判断する際に必要となる情報を整理・発信するとともに、人材の育成や関係者間のマッチング等が可能なプラットフォームとして「スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)」を構築することとしています。

また、スマート農業・大区画化は効率的な側面を持つ一方、資金・人材・技術の面で小規模農家がついていけない現実もあるとされています。この格差を是正するため、政府は地域営農組織への支援や関係機関との連携強化を進めているという見方があり、担い手の確保と事業継承は農政の最大の課題のひとつとなっています。

食卓とつながる、私たちにできること

スマート農業は農家だけの問題ではありません。農業の生産性が高まれば食料の安定供給につながり、環境負荷の低減にも寄与します。
日本では食料自給率の低さが課題とされており、政府は食料自給率の向上目標を掲げており、スマート農業もその取り組みのひとつと位置づけられているとされています。

消費者としてできることのひとつは、スマート農業で生産された国産農産物を意識して選ぶことです。「どこで、どのように作られたか」に関心を持つ消費行動が、生産者にとっての投資判断を後押しする力になります。農業の未来は、農家だけでなく、食べる側の私たち全員が一緒につくっていくものです。

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