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CSR

【解説】デンソーのCSR活動|環境・社会・ガバナンスの取り組みを徹底分析

株式会社デンソー(以下、デンソー)は、世界第2位の自動車部品メーカーとして、高い技術力と品質で世界中の自動車産業を支えています。近年、企業の社会的責任(CSR)への関心が高まる中、デンソーはサステナビリティ経営を推進し、環境保護、社会貢献、コーポレートガバナンスの各分野で積極的な取り組みを展開しています。本記事では、デンソーのCSR活動について、具体的な取り組み内容、成果指標、外部評価を含めて詳しく解説します。企業のCSR担当者、ESG投資を検討する投資家、就職活動中の学生の皆様にとって有益な情報をお届けします。

デンソーの会社概要

デンソーは、1949年の創業以来75年以上にわたり、自動車部品業界において世界第2位、日本第1位の地位を確立している企業です。トヨタグループの中核企業として、先進的な自動車技術、システム・製品を提供するグローバルな自動車部品メーカーとして成長を続けています。36カ国に拠点を展開し、約16万人の従業員を抱える同社は、世界初製品や技術の提供を通じて、企業の社会的責任を果たしていくことを使命としています。

デンソーの基本情報

項目詳細
会社名株式会社デンソー(DENSO CORPORATION)
本社所在地愛知県刈谷市昭和町1-1
設立年1949年12月16日
業種自動車部品製造業
事業内容エレクトリフィケーションシステム、パワートレインシステム、サーマルシステム、モビリティエレクトロニクス、先進デバイス等の開発・製造
上場市場東京証券取引所プライム市場

デンソーの事業は車載事業と非車載事業に分かれており、車載事業では電動化システム、パワートレインシステム、エアコンシステム、先進運転支援システム(ADAS)、センサー技術など、自動車の電動化・知能化を支える幅広い製品群を展開しています。非車載事業では、産業用機器やQRコードをはじめとするインダストリアルソリューション、農業分野でのフードバリューチェーン事業なども手がけており、モビリティ技術を活用した社会課題の解決に取り組んでいます。2024年度の連結売上収益は7兆1,618億円、営業利益5,190億円と堅調な業績を維持し、持続的な成長を実現しています。

デンソーのCSR活動とは

デンソーは「人と地球が、ともに健全であり続けるために」をサステナビリティのスローガンに掲げ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から包括的なCSR活動を展開しています。同社のサステナビリティ経営は、企業理念である「新しい価値の創造を通じて世界の人々の幸福に貢献する」を基盤とし、多様なステークホルダーと価値観を共有しながら連携・協力していくことを重視しています。

CSR基本方針・理念

デンソーのCSR活動は、2006年に策定された「デンソーグループ企業行動宣言」を基礎として展開されています。この宣言では、各国・地域での誠実な企業行動を通じて、社会の持続的な発展に率先して貢献することを明確に表明しています。特に以下の基本方針を掲げています。

環境分野では、地球環境を保護するためにできることを、すべてのビジネス領域で実行し、リードしていく大きな責任があると認識しています。具体的には「デンソーエコビジョン2025」に基づき、2050年の持続可能な地域・社会を実現するためのアクションプランを推進しています。

社会分野では、よき企業市民として社会との共生を図り、地域・国際社会から一層信頼される企業を目指しています。「デンソーグループ社会貢献活動基本方針」に基づき、環境との共生、安心安全な街づくり、人づくり(青少年育成・障がい者福祉)の三分野を重点に活動を展開しています。

ガバナンス分野では、企業経営の透明化と効率化をめざす「コーポレートガバナンスの確立」を重要課題と認識し、健全性・効率性・透明性の高い経営を実践しています。

出典:株式会社デンソー サステナビリティレポート(2024年)

重点取組領域とマテリアリティ

デンソーは、事業活動が社会に与える影響と、社会からの期待を総合的に勘案して、ESG各分野における重点取組領域を設定しています。同社のマテリアリティ(重要課題)は、ステークホルダーの期待と事業への影響度を軸にしたマテリアリティマトリックスにより特定されています。

分野重点取組項目目標・KPI
環境(E)カーボンニュートラル推進、資源循環、生物多様性保全2035年カーボンニュートラル達成、エネルギー効率2倍向上
社会(S)人権尊重、ダイバーシティ推進、地域社会貢献女性管理職比率向上、サプライチェーン人権対応強化
ガバナンス(G)コーポレートガバナンス強化、リスク管理、コンプライアンス取締役会の独立性確保、内部統制システム強化

特に環境分野では、「デンソーエコビジョン2025」において、「エネルギー1/2」「クリーン2倍」「グリーン2倍」の3つの目標「ターゲット3」を設定し、製品・工場・社員・経営の各段階で10の具体的行動「アクション10」を推進しています。これらの取り組みは、パリ協定の目標達成に向けた科学的根拠に基づく目標設定(SBT)として認定を受けており、国際的な環境基準に適合した先進的な取り組みとして評価されています。

出典:株式会社デンソー 統合報告書(2024年)

デンソーの環境への取り組み

デンソーは「地球環境を保護するためにできることを、すべてのビジネス領域で実行し、リードしていく大きな責任がある」との認識のもと、2035年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、先進的な環境取り組みを展開しています。同社の環境戦略は、「デンソーエコビジョン2025」を基盤とし、さらに2050年の持続可能な地域・社会を実現するためのアクションプランとして発展させています。

脱炭素・カーボンニュートラルへの取り組みでは、製造業として世界で最も早い2035年のカーボンニュートラル達成を目指しています。2023年度には、全社で2,730件の省エネ改善により、CO2排出量原単位(単独)を2012年度比で50%削減の「エネルギーハーフ」を3年前倒しで達成しました。同社では「製造用エネルギーは固定化されたインフラではなく、自在に使いこなすべき部品のひとつ」という独自の視点から「エネルギーJIT(ジャスト・イン・タイム)活動」を展開し、必要な時に必要なだけエネルギーを使用・供給する活動を推進しています。

CO2回収・循環技術の開発においては、世界初となる小型で高効率なCO2回収システムの実現を目指しています。従来の「熱式」に対してモビリティ技術を活かした「電界式」を開発することで、回収に必要なエネルギーを削減し、加熱や冷却のための機構が不要な小型化を実現しています。2020年には、デンソー初のCO2循環を実現するプラントを完成させ、回収したCO2をメタンに変えて再利用する技術の実用化に取り組んでいます。

再生可能エネルギーの活用拡大では、工場における再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しています。2035年の目標達成に向けて、現在の工場でのCO2排出量190万トンを123.5万トンまで圧縮し、残りの排出分についてはカーボンニュートラルなガス燃料の利用やCO2回収技術により相殺する計画です。

項目2023年度実績目標値(年度)
CO₂排出量削減率(2012年度比)50%削減達成カーボンニュートラル(2035年)
省エネ改善件数2,730件継続的改善実施
工場CO₂排出量削減継続中35%削減(2035年)

資源循環・サーキュラーエコノミーの推進では、製品設計から製造、使用、リサイクル、廃棄までのライフサイクル全体での環境負荷低減に取り組んでいます。同社は2002年に国内全事業所でゼロ・エミッション(廃棄物の埋立処分ゼロ)を達成し、現在も継続して維持しています。

生物多様性保全については、事業活動が生態系に与える影響を最小化し、地域の自然環境保護に貢献する活動を展開しています。各地域での植樹活動や自然環境保全プロジェクトを通じて、生物多様性の維持に貢献しています。

出典:株式会社デンソー サステナビリティレポート(2024年)、株式会社デンソー 公式ホームページ

デンソーの社会貢献活動

デンソーは「よき企業市民として、社会の持続的な発展に貢献するため、地域に根差した社会貢献活動を積極的に推進し、信頼・共感される企業を目指す」との方針のもと、「環境との共生」「安心安全な街づくり」「人づくり(青少年育成・障がい者福祉)」の三分野を重点に社会貢献活動を展開しています。2006年度に策定された「デンソーグループ社会貢献活動基本方針」に基づき、各国・各地域の実情に合致した活動を地域社会と協力しながら推進しています。

地域貢献・教育支援の取り組みでは、青少年の健全育成を目的とした教育支援活動を積極的に実施しています。同社では、理科教育の推進や技術系人材の育成支援、インターンシップの受け入れなど、次世代を担う人材の育成に貢献しています。また、地域の清掃活動や環境保全活動を通じて、地域社会との良好な関係構築に努めています。

人権尊重とダイバーシティ推進においては、2016年に経営トップからダイバーシティ&インクルージョン推進に対する強いメッセージを発表し、グローバルで積極的な取り組みを進めています。同社では「年齢、国籍、人種、性別・性的指向・性自認・性表現、障がいの有無、宗教、経験、価値観など目に見えない違いも含め、多様な人財が生き生きと活躍できる環境・組織風土の実現」を目指しています。

特に女性活躍推進では、「女性採用の強化」「女性社員のキャリア形成支援」「男性の育児参画支援」を柱として、2025年度末に向けた具体的な目標を設定しています。障がい者雇用についても、デンソー太陽株式会社や株式会社デンソーブラッサムといった特例子会社を通じて、障がいのある方の活躍機会を積極的に創出しています。

従業員の働きがい向上では、仕事と育児の両立支援制度の拡充、フレックスタイム制やテレワーク制度の導入など、働き方改革に積極的に取り組んでいます。また、社員の副業を認めるなど、多様な働き方や自己実現を支援する制度を整備しています。

ボランティア活動支援については、「ボランティア活動支援制度」を設け、社員の自主的な社会貢献活動を後押ししています。特に東日本大震災の支援については、10年間にわたって継続的な支援活動を実施し、被災地の復興に貢献してきました。

音文化創造活動として、音響技術を活かした独自の社会貢献活動も展開しています。デンソーテンでは、音に携わる企業として培ってきた技術や従業員の音楽活動を活かし、チャリティーコンサートの開催や楽器の寄贈などを通じて、地域の文化振興に貢献しています。

  • 青少年育成プログラムの実施と理科教育支援
  • 障がい者雇用促進と特例子会社での活躍機会創出
  • 女性活躍推進と男性育児参画支援
  • 地域清掃活動と環境保全プロジェクト参加
  • 東日本大震災被災地への10年間継続支援
  • 音文化創造活動とチャリティーコンサート開催

出典:株式会社デンソー サステナビリティレポート(2024年)、株式会社デンソー 公式ホームページ

デンソーのガバナンス・コンプライアンス

デンソーは「企業経営の透明化と効率化をめざすコーポレートガバナンスの確立」を重要課題と認識し、健全性・効率性・透明性の高い経営を実践しています。同社のガバナンス体制は、ステークホルダーからの信頼を基盤とし、持続的な企業価値向上を目指した包括的な仕組みとして構築されています。

取締役会構成と企業統治体制では、監査役会設置会社として、取締役会による意思決定・監督機能と、監査役会による監査機能を適切に分離し、実効性の高いコーポレートガバナンスを実現しています。取締役会は社内取締役と独立社外取締役で構成され、多様な視点からの監督と助言により、経営の透明性と客観性を確保しています。社外取締役には豊富な経験と幅広い見識を有する人材を選任し、独立性の高い監督機能を発揮しています。

内部統制システムについては、会社法および金融商品取引法に基づく内部統制システムを整備・運用しています。業務の適正性確保、リスク管理、コンプライアンス推進を統合的に管理する体制を構築し、定期的な内部監査により実効性を検証しています。また、財務報告に係る内部統制についても、適切な評価と改善を継続的に実施しています。

コンプライアンス体制では、1997年に設置した「企業倫理委員会」(現「リスクマネジメント会議」)を中心とした推進体制を構築しています。2006年に制定した「デンソーグループ社員行動指針」に基づき、グループ社員一人ひとりが高い倫理観を持って公正・誠実に行動することを徹底しています。海外グループ会社においても、地域統括会社が各国・地域の法令・慣習を反映した「地域版 社員行動指針」を作成し、グローバルでのコンプライアンス確立に努めています。

リスク管理体制として、事業活動において生じる多様なリスクを統合的に管理する仕組みを整備しています。各地域統括会社に「コンプライアンス委員会」や「コンプライアンスリーダー」を設置し、地域特性を考慮した組織体制の整備、通報制度の導入・運営、啓発活動を推進しています。定期的に日本・北米・南米・欧州・中国・東南アジア・インド・韓国の各地域の法務担当者間で情報・課題を共有し、コンプライアンス確立と維持に努めています。

情報開示体制では、ステークホルダーへの適切な情報開示を重視し、財務情報・非財務情報の両面で透明性の高い開示を実施しています。統合報告書、サステナビリティレポート、有価証券報告書等を通じて、事業戦略、財務状況、ESGへの取り組みを包括的に開示し、ステークホルダーとの建設的な対話を促進しています。

内部通報制度として、「企業倫理ホットライン」を設置し、社外弁護士を窓口とした通常の指揮系統から独立した体制で運用しています。匿名通報も可能な体制とし、通報者情報の守秘義務や不利益取り扱いの禁止を明文化することで、社員が安心して利用できる環境を整備しています。2023年度には125件の通報・相談が寄せられ、調査・事実確認の上、適切に対処しています。また、「ハラスメント相談窓口」「障がい者相談窓口」「LGBT相談窓口」など専門相談窓口も設置し、多様な課題に対応しています。

出典:株式会社デンソー コーポレートガバナンス報告書(2024年)、株式会社デンソー 有価証券報告書(2024年)

デンソーのCSR活動の成果と評価

外部評価・認定

デンソーのCSR活動は、国内外の権威ある評価機関から高い評価を受けており、ESG投資インデックスの構成銘柄として継続的に選定されています。同社は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する複数のESG指数に組み入れられ、機関投資家からの信頼を獲得しています。

評価機関・制度評価・認定内容取得年度
MSCI ESG RatingsMSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数組み入れ継続選定中
FTSE RussellFTSE4Good Index Series、FTSE Blossom Japan Index構成銘柄継続選定中
SOMPOアセットマネジメントSOMPOサステナビリティ・インデックス構成銘柄継続選定中

CDP(気候変動分野)では、気候変動対策への取り組みが評価され、世界的な環境評価機関である英国CDPから継続的に高い評価を受けています。同社の温室効果ガス削減目標や再生可能エネルギーの活用、気候変動リスクへの対応が評価されています。

健康経営優良法人認定では、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2017年の制度開始以来、8年連続で選定されています。従業員の健康増進に向けた積極的な取り組みが評価されています。

統合報告書表彰では、統合報告書2023において、WICIジャパンが主催する「WICIジャパン統合リポートアウォード2023」の「Gold Award(優秀企業賞)」、「第3回日経統合報告書アワード」において「グランプリE賞」を受賞し、情報開示の質の高さが評価されています。

具体的な成果指標

デンソーは、CSR活動の成果を定量的に測定・開示し、継続的な改善に取り組んでいます。特に環境分野では、2023年度にエネルギーハーフ(CO2排出量原単位50%削減)を3年前倒しで達成するなど、具体的な成果を上げています。

環境成果指標では、2023年度に全社で2,730件の省エネ改善を実施し、CO2排出量原単位(単独)を2012年度比で50%削減しました。グループ会社においても2012年度比46〜54%削減を達成し、グローバルでエコビジョン2025目標を前倒し達成しています。省エネルギー大賞において2009年から14年連続15度目の受賞を果たすなど、技術力の高さが外部からも評価されています。

社会貢献成果指標では、女性管理職比率の向上、障がい者雇用率の改善、男性育児休業取得率の向上など、ダイバーシティ推進の具体的な成果を上げています。また、東日本大震災支援を10年間継続するなど、地域社会への長期的なコミットメントを実践しています。

ガバナンス成果指標では、内部通報制度の活用実績(2023年度125件)、コンプライアンス教育の実施状況、取締役会の実効性評価結果などを通じて、ガバナンス体制の実効性を継続的に検証・改善しています。

出典:株式会社デンソー 外部評価・表彰実績(2024年)、株式会社デンソー サステナビリティレポート(2024年)

まとめ

株式会社デンソーは、世界第2位の自動車部品メーカーとしての責任を自覚し、「人と地球が、ともに健全であり続けるために」をスローガンに掲げた包括的なCSR活動を展開しています。2035年カーボンニュートラル達成という製造業として世界最速レベルの環境目標に加え、多様な人財の活躍推進、透明性の高いガバナンス体制の構築により、持続可能な社会の実現に向けた先進的な取り組みを推進しています。

デンソーCSR活動の特色は、技術力を活かした革新的なソリューションの創出にあります。CO2回収・循環技術の開発、エネルギーJIT活動による省エネルギー推進、音文化創造活動など、同社ならではの技術と専門性を活かした独自性の高い社会貢献活動を展開している点が特徴的です。

今後の展望として、デンソーは2035年のカーボンニュートラル達成に向けた技術開発の加速、サプライチェーン全体でのサステナビリティ推進、地域社会との協働によるレジリエントな社会づくりに取り組む予定です。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)の融合により、新たな価値創造を目指しています。

主要課題としては、グローバル事業展開に伴う各地域でのESG要請への対応、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの強化、気候変動適応策の充実などが挙げられます。これらの課題に対し、同社は継続的な改善とステークホルダーとの対話を通じて取り組んでいく方針です。

デンソーのCSR活動は、企業の持続的成長と社会課題解決の両立を目指す先進的な事例として、多くの企業にとって参考となる取り組みといえるでしょう。同社の今後の展開に注目が集まります。

出典:株式会社デンソー 統合報告書(2024年)、株式会社デンソー サステナビリティレポート(2024年)【詳細解説】株式会社デンソーのCSR活動|環境・社会・ガバナンスの取り組みを徹底分析

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