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東京都の農地で生まれたカーボンクレジット|バイオ炭が支える脱炭素農業

東京都の農地で実証されたバイオ炭による炭素貯留の取り組み

都市の農地が二酸化炭素を吸収し、気候変動対策の担い手になる。少し意外に聞こえるかもしれませんが、その取り組みの成果が東京で形になりました。東京都は2026年6月8日、都内の農地に由来するカーボンクレジットの発行が完了したと発表しました。スタートアップと連携し、身近な自然資源を生かしてCO2を吸収・除去する「吸収・除去系カーボンクレジット創出促進事業」の一環です。脱炭素を遠い世界の話としてではなく、足もとの畑から始める。その具体的な一歩を見ていきます。

都市の農地が炭素をたくわえる仕組み

実証を担ったのは、令和4年に設立された株式会社フェイガーです。同社は、もみ殻や木材などを酸素の少ない状態で蒸し焼きにしてつくる「バイオ炭」を農地にまき、炭素を土の中に長くとどめる取り組みを進めてきました。植物は成長の過程で大気中のCO2を取り込みますが、そのまま枯れて分解されると、ためこんだ炭素はふたたび大気へ戻っていきます。これを炭の形にして土に施すことで、分解されにくい状態のまま地中に固定しておける、という考え方です。畑がそのまま、二酸化炭素をしまっておく貯蔵庫の役割を果たすわけです。

今回はJ-クレジット制度の方法論「AG-004 バイオ炭の農地施用」に基づき、都内農地分として2,617kg-CO2相当が認証されました。栽培実証は町田市で玉ねぎ、八王子市で小松菜や赤カブなどを対象に行われ、バイオ炭をまいたうえで作物を育てながら、その効果を見える化していきました。連携した都内の農家とは、今後もクレジットづくりのモデル構築に向けて取り組みを続けるとしています。

バイオ炭を施用した都内の農地のイメージ

2033年末までに約2万トンを見込む

東京都は、参加する農地を都内で広げていくことで、2033年末までに約2万t-CO2のクレジット創出を見込んでいると説明しています。これは標準的な家庭およそ5,643世帯が1年間に排出する温室効果ガスに相当する量です。一つひとつの畑が生み出す削減量は小さくても、積み重なれば大きな意味を持ちます。事業では、選ばれたスタートアップに対して2か年で最大4,000万円の経費負担や、事業プロモーターによる伴走支援を行う仕組みも用意され、技術やアイデアを持つ担い手を後押ししています。

そもそもカーボンクレジットとは

カーボンクレジットは、省エネ設備の導入や森林管理、土壌への炭素貯留などによって生まれたCO2の削減量や吸収量を、第三者機関の検証を経て取引できるように認証したものです。自社の努力だけでは排出を減らしきれない企業が、削減や吸収に取り組む人からクレジットを買い取ることで、社会全体での脱炭素を後押しできます。これまで森林などが中心だった創出の現場に、農業という日々の営みが新たに加わりつつあることが、今回の取り組みの大きな意味です。

畑から考える、私たちにできること

農地の炭素貯留は専門的に見えて、実は私たちの食卓と地続きです。地元や近郊で育った農産物を選ぶことは、輸送に伴う排出を抑えるだけでなく、環境に配慮した農業を続ける生産者を経済的に支えることにもつながります。誰が、どんな思いで、どんな工夫をして育てた野菜なのか。その背景に少し目を向けるだけでも、いつもの買い物の景色は変わってきます。

脱炭素という言葉は大きく聞こえますが、入り口は驚くほど身近にあります。まずは近くの直売所やスーパーで、都市近郊で育った野菜を1つ手に取ってみてください。その小さな選択が、足もとの畑と、その先の気候の未来へと静かにつながっています。

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