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LIFESTYLE

「フェアトレードは意味ない」と言われる理由|データで読み解く効果と後悔しない選び方

Photo by everdrop GmbH on Unsplash

「フェアトレードは意味ない」と検索すると、批判と擁護の両方が出てきます。どちらを信じればよいのか迷った方も多いと思います。実際、プレミアム(奨励金)の行方が見えにくいという指摘もあれば、認証によって生産者の経営が安定したという報告もあり、白か黒かでは語れません。この記事では、「意味ない」と言われる理由を3つに分けたうえで、研究や報告が示していること、制度の限界、日本での広がりを整理します。最後に、買ってから後悔しないための選び方もまとめます。

この記事で学べること

  • 「フェアトレードは意味ない」と言われる3つの批判の中身と、それぞれどこまで当たっているか
  • 最低価格とプレミアムという二段構えの仕組みと、その限界
  • 熊本市のフェアトレードタウンや消費者庁の啓発など、日本での広がり方
  • 認証ラベル・組織認証・産直型の違いと、後悔しない5つの確認ポイント
  • コーヒーやバナナなど、いつもの1品から始める具体的な一歩
目次

「フェアトレードは意味ない」と言われる3つの理由

批判の多くは、次の3つに分けられます。それぞれ、制度の仕組みを知ると見え方が変わる部分と、そのまま受け止めるべき部分があります。

プレミアムが生産者に届いていないのでは、という指摘

フェアトレード認証の製品には、取引価格に上乗せされる「フェアトレード・プレミアム」があります。プレミアムは生産者組合に支払われ、学校や診療所、設備投資など何に使うかは組合の民主的な話し合いで決めるとされています。一方で、店頭価格が上がった分がそのまま生産者の手取りになるわけではありません。流通や加工、ブランドの費用が積み重なるためです。この構造が見えにくいことが、「誰が得をしているのか分からない」という不信につながっています。

認証にかかる費用が小規模生産者の負担になるという指摘

認証を取るには基準を満たす体制づくりが必要で、審査や更新の費用もかかります。零細な農家ほど、この負担は重くなりがちです。そのため、最も支援が必要な層に届いていないのではないか、という疑問が出てきます。認証の枠組みの外にいる生産者のほうが、むしろ取り残されやすいという見方もあります。

買う側の自己満足で終わっているという指摘

マークが付いているだけで安心し、どの国のどんな生産者の作物かを確かめないまま買う場面は珍しくありません。マークを頼りに選ぶこと自体は悪いことではありません。ただ、そこで考えるのをやめてしまうと、「良いことをした気分」だけが残ります。この点は、消費者側の姿勢に向けられた批判です。

研究や報告が示していること|効果は「ある」が「万能ではない」

批判を評価するには、感想ではなく研究や報告を見る必要があります。ここでは、フェアトレード側と第三者の研究が一致している点と、食い違っている点を分けて見ます。

経済学の研究が示すのは「効果は一様ではない」という結果

経済学者のドラグサヌ、ジョヴァンヌッチ、ナンらは2014年、フェアトレードに関する実証研究を整理した論文を発表しました。この論文では、生産者に利益が出る面はあるものの、平均的な効果は大きくなく、地域や作物によるばらつきが大きいとされています。「全く意味がない」とも「貧困を解決する」とも言えない、というのが研究の基本的な位置づけです。

認証組合で働く雇用労働者の状況は別の論点

もう一つ、見落とされやすい論点があります。小規模農家が自分の農地で作る作物と、大規模農園や組合で雇われて働く人たちの賃金は、別の問題だということです。2014年に英国の研究者らがエチオピアとウガンダで行った調査では、認証を受けた組合の雇用労働者の賃金や労働条件が、非認証の事業者と比べて目立って良いとは言えなかったと報告されています。この指摘を受けて、フェアトレード側も雇用労働者を重視した基準の見直しを進めてきたとされています。

相場が高騰すると、最低価格の役割は見えにくくなる

フェアトレードの最低価格は、国際相場が下がったときに生産者を守る下支えです。コーヒーの国際相場は2020年代半ばに高い水準を付けた局面があり、その間は、市場価格が最低価格を上回るために最低価格が効かない場面がありました。こうなると、「最低価格に意味はあるのか」という疑問が出てきます。ただ、下支えは相場が下がった年に初めて価値が見えるものです。相場が高い間は、プレミアムの使い道と、安定した買い手がいることのほうが大事になります。

二段構えの仕組みと、どこまで届くかの限界

仕組みを正しく知っておくと、批判のどの部分が当たっているのか、判断しやすくなります。

最低価格とプレミアムの役割分担

フェアトレード・インターナショナルの基準では、対象作物ごとに最低価格が定められています。相場がそれを下回っても、生産者は最低価格以上で売れる設計です。これとは別に、地域開発などに使う資金としてプレミアムが上乗せされます。前者は価格が下がったときの安全網、後者は地域に投資するための資金という位置づけです。両方を組み合わせた二段構えになっています。

認証組合でも、全量をフェアトレード条件で売れるとは限らない

ここが、批判のうち最も当たっている点の一つです。認証を取った組合でも、収穫した全量がフェアトレードの条件で買ってもらえるとは限りません。買い手が付かない分は、通常の市場価格で売られます。消費者が選んで買うことは、この「フェアトレード条件で売れる量」を増やすことに直接つながります。

制度が目指すのは貧困の解決ではなく、取引条件の改善

フェアトレードは、生産者の貧困を単独で解決する制度ではありません。気候変動、土地の問題、輸出国側の政策など、貧困を生む要因は他にもあります。制度が担うのは、取引条件を少しでも公正にすることと、生産者組織が地域に投資できる資金を生むことです。「万能ではないから意味ない」のではなく、「何ができて、何ができないかを知って選ぶ」ことが、現実的な向き合い方だと考えます。

日本での広がり|自治体・消費者庁・買い方の3つのかたち

日本では欧州と比べて、フェアトレード製品の購入額が小さいとされています。それでも、自治体や行政、消費者団体が関わる取り組みは続いています。

フェアトレードタウンという自治体の取り組み

熊本市は2011年6月に、アジアで初めてフェアトレードタウンに認定されました。その後、名古屋市や逗子市なども認定を受けています。認定には、行政、企業、市民団体が連携し、普及活動を続けることが求められます。イベントを一度開いて終わりにはできない仕組みです。「買うか買わないか」だけでなく、地域で選択肢を増やす動きとして位置づけられます。

消費者庁が進めるエシカル消費の啓発

消費者庁は、人や社会、環境に配慮した消費行動を「エシカル消費」として紹介しています。フェアトレード商品は、その代表的な選択肢の一つです。国が言葉の認知を広げているため、フェアトレードは一部の関心層だけの話ではなく、日常の買い物の選択肢として位置づけられつつあります。

日本での買い方は大きく3つのかたちに分かれる

日本でフェアトレードの商品を手に取る機会は、大きく3つのかたちに分けられます。

  • 認証ラベル型は、スーパーや生協、コーヒーショップなどで、国際フェアトレード認証ラベルが付いた食品を買う方法です。
  • 組織認証型は、WFTO(世界フェアトレード機関)の加盟団体が扱う衣料や雑貨を買う方法です。ブランド全体がフェアトレードの原則に沿っているかが基準になります。
  • 産直型は、生産者団体と直接取引する団体の商品を、宅配や共同購入で買う方法です。

同じ「フェアトレード」でも、確かめる箇所が違います。次の章で、その違いを整理します。

認証の種類と対比|ラベルの意味を取り違えない

「意味ない」という印象は、ラベルの意味の取り違えから生まれることも少なくありません。違いを知っておくだけで、期待のズレが減ります。

製品認証と組織認証は、見ている対象が違う

国際フェアトレード認証ラベルは、特定の原料や製品について、生産から取引までの基準を満たしているかを見ます。WFTOは、事業を行う組織そのものが原則を守っているかを見る仕組みです。前者は食品に多く、後者は衣料や雑貨のブランドに多く見られます。

原料がまとめて扱われる「マスバランス」方式とは

カカオ、砂糖、茶などでは、フェアトレードの原料を通常の原料と分けずに流通させ、購入量に見合う量をフェアトレード取引として扱う方式が使われることがあります。これは「マスバランス」と呼ばれます。中身の分別はできないものの、フェアトレード条件で売れる量を増やす役割があるとされています。パッケージに書かれた説明で、どの方式なのかを確認できます。

他の認証との違いは「何を重視するか」にある

森林保全はFSC、パーム油はRSPO、取引条件はフェアトレードというように、認証ごとに重視する点が違います。どれが優れているかではなく、自分が気になる課題に合うかで選ぶのが現実的です。

認証ごとの重視点を横並びで比べたい方には、次の記事が参考になります。

後悔しない選び方|買う前に確認したい5つのポイント

批判と仕組みを踏まえると、選ぶときの確認点は次の5つに整理できます。全部を完璧にこなす必要はなく、気になるものから使えば十分です。

1. ラベルの種類と、原料の扱い方を確認する

製品認証なのか、組織認証なのか、マスバランス方式なのか。パッケージの小さな文字や公式サイトに書かれていることが多いので、一度見ておくと選ぶ基準が増えます。

2. 産地や生産者の情報が開示されているかを見る

産地の国や、組合の名前、支援の内容を公開しているブランドは、透明性が高いと言えます。公開されていない場合は、問い合わせてみるのも一つの方法です。

3. 認証だけに頼らず、ブランドの調達方針も読む

認証の外にも、直接取引や独自の調達基準でよい取り組みをしている事業者はあります。反対に、認証があっても、他の商品の調達方針が不透明な企業もあります。企業のサステナビリティページで、調達方針を一度確認してみてください。

4. 続けられる価格帯かどうかで決める

生産者にとって、一度きりの高額購入より、安定して続く需要のほうが事業の見通しを立てやすいと考えられます。毎日の飲み物やおやつなど、続けられる品目と金額で選ぶほうが、結果的に長続きします。

5. 「それだけで十分」とは考えない

フェアトレードは、選択肢の一つです。気候変動の影響を受ける産地への支援、食品ロスの削減、省エネなど、他の行動と組み合わせて考えると、視野が広がります。

たとえばコーヒーなら、ラベルの種類や買える場所をまとめた次の記事が役に立ちます。

「意味ない」と言い切る前に|誤解されやすい3つのポイント

最後に、「意味ない」という声のなかで特に誤解されやすい点を整理します。判断の分かれ目になる部分です。

「100%の生産者が豊かになるわけではない」ことは前提にする

フェアトレードを選んでも、すべての生産者が経済的に豊かになるわけではありません。研究でも、効果にはばらつきがあるとされています。それでも、取引条件を改善する取り組みを選ぶことには、一定の意味があります。

「高いから意味がない」とは限らない

価格が高いから意味がない、とも言い切れません。価格の上乗せが何に使われているのか、どのくらいの割合が生産者に届くのかは、ブランドによって異なります。数字を公開している事業者を選ぶと、納得しやすくなります。

「買わない」ことが答えになるとは限らない

批判があるからといって買うのをやめると、フェアトレード条件で売れる量が減ります。それは、認証を取った生産者にとっては収入の減少につながる可能性があります。気になる点があるなら、買わないよりも、情報を開示している事業者や、より透明性の高い商品を選ぶほうが現実的です。

バナナの価格や買える場所を調べたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

「フェアトレードは意味ない」という声には、プレミアムの行方が見えにくいこと、認証の負担が小規模生産者に重いこと、買う側が考えるのをやめがちなことという3つの背景があります。研究でも、効果は一様ではなく、雇用労働者の状況など課題が残るとされています。一方で、最低価格とプレミアムという二段構えの制度は、取引条件の改善と地域への投資という役割を持っています。

日本でも、フェアトレードタウンや消費者庁の啓発などを通じて、選択肢は増えつつあります。大切なのは、「万能ではない」ことを知ったうえで、ラベルの種類や産地の情報、続けられる価格帯を確認しながら選ぶことです。まずは、いつも買っているコーヒーやチョコレートのうち1つだけを、次回フェアトレード認証の商品に替えて、ラベルの説明を読んでみてください。

  • 批判は「プレミアムの不透明さ」「認証の負担」「消費者の思考停止」の3点に整理できる
  • 研究では効果にばらつきがあり、雇用労働者の状況など課題も指摘されている
  • 制度は最低価格とプレミアムの二段構えで、取引条件の改善を目指している
  • ラベルの種類、産地情報、続けられる価格帯の3点を確認して選ぶ
  • まず1品だけ置き換え、パッケージの説明を読むところから始める

参考文献

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