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ENVIRONMENT

水資源の保全に日本でできること|水の使い方・食卓・地域の3つの距離から考える

Photo by Eric Prouzet on Unsplash

蛇口をひねれば水が出る日本で暮らしていると、水資源の保全は遠い話に感じられます。環境政策の資料を読む仕事をしていて意外だったのは、日本の水の話は「足りるか足りないか」の二択では語れないことでした。水は量だけでなく、使える時期、水質、使う場所の条件が重なって初めて「使える水」になります。

この記事では、国土交通省の公開資料をもとに日本の水の使われ方を確認します。そのうえで、暮らしの中で保全に関われる行動を、蛇口・食卓・地域の3つの距離に分けて紹介します。

この記事で学べること

  • 日本の水資源の量と、何にどれだけ使われているかの全体像
  • 「水が豊かな国」でも保全が必要とされる理由
  • 水の保全を「量」「質」「水を育てる仕組み」の3つに分けて考える見方
  • 蛇口・食卓・地域の3つの距離で、自分に合う保全行動を選ぶ方法
  • 今日から試せる、水の使い方を1つ確かめる行動

日本は水が豊かな国なのに、なぜ水資源の保全が必要なのか

水資源の保全という言葉は、水不足の国の話として受け取られがちです。ところが国土交通省の資料では、日本は世界的に見ると降水量が多く、水が豊かな国と位置づけられています。それでも保全が政策課題として扱われているのには理由があります。最初にその背景を、数字で確認しておきます。

数字で見る日本の水の量と使われ方

国土交通省の「水資源」のページによると、日本の年間降水量は約6,600億m³です。そのうち約35%は蒸発散し、残る約4,300億m³が、国土で最大限利用できる理論上の量(水資源賦存量)とされています。

実際に使われている水は、2019年の取水量ベースで、生活用水が約148億m³、工業用水が約103億m³、農業用水が約533億m³でした。合計は約785億m³になります。

この内訳を私が割合に直してみると、農業用水が約7割、生活用水が約2割弱、工業用水が約1割強です。保全というと家庭の節水を思い浮かべがちですが、水の使用量全体で見れば農業用水の比重が大きいことが分かります。家庭の水だけを見ていると、全体像の一部しか見えていないことになります。

「ある水」と「使える水」は別のもの

もう一つ押さえておきたいのは、同じ資料が指摘している点です。日本は降水量が多い一方で、河川の流量は一年を通じた変動が大きいとされています。梅雨や台風の時期に雨が集中し、渇水期には流れが細ります。そのため、安定して水を使えるようにダムや堰などの水資源開発施設が整備されてきました。

つまり日本の水の豊かさは、自然条件だけで成り立っているわけではありません。施設の維持や、水源となる森林・農地・地下水の状態、そして使う側の量と質のコントロールに支えられています。保全が必要なのは、この「使える水」を将来も保つためだと言えます。

使い方の変化から見えること

同じ資料には、使われ方の変化も書かれています。生活用水と工業用水は、1960年代半ばから2000年頃までの間に約3倍に増えました。近年は生活用水の使用量が横ばいで、工業用水も回収利用が進んだため、河川などから新たに取水する量は少しずつ減っているとされています。

私はこの記述に、保全の手がかりがあると感じています。使う量を減らす工夫が、実際に統計へ表れてきた分野があるということです。一方で、気候の変動で雨の降り方が変わる可能性もあります。需要が落ち着いているうちに、水源や使い方の備えを整えておく意味は小さくありません。

水資源の保全は「量」「質」「水を育てる仕組み」の3つで考える

水資源の保全を「節水すること」と言い換えてしまうと、取りこぼすものが出てきます。政策資料を読み比べていると、保全の論点は大きく3つに分かれると感じます。量、質、そして水を育てる仕組みです。自分の関心や行動をどこに置くかを決める助けになるので、順に見ていきます。

量の保全 取りすぎず、無駄にしない

量の保全は、取水や使用の総量を適切に保つ考え方です。家庭の節水は分かりやすい例ですが、前の章で見たとおり使用量の大きな部分を占めるのは農業用水です。農業用水は米づくりなどを支えており、削れば済むという性質のものではありません。

そのため、農業用水については、水路の維持や効率的な配水など、使い方の工夫が論点になります。「減らす」だけでなく「必要な水を安定して届ける」ことも、量の保全の一部です。

質の保全 使った後の水をきれいに戻す

水は使ったあとに川や海へ戻ります。洗剤、油、食べ残し、薬品などをそのまま流せば、水質に負荷がかかります。質の保全とは、使い終えた水を下水道や排水処理を通じて、できるだけ負荷を小さくして自然へ戻すことです。

家庭でできるのは、油や調味料を排水に流さない、洗剤を必要な量だけ使うといった行動です。量の節約と違い、質への配慮は水道料金に表れません。だからこそ、意識して続けることが大切になります。

水を育てる仕組みの保全 森・農地・地下水

雨水は森林の土壌にしみ込み、時間をかけて川や地下水に出ていきます。森林にはこうした水源涵養の機能があるとされ、「緑のダム」と呼ばれることもあります。水田に水を張ることが地下水の涵養に役立つ面があるとも言われます。

日本では、水資源の保全は森林・農地・河川・地下水といった広い範囲を一体で考える方向に進んでいます。2014年(平成26年)7月に施行された水循環基本法に基づき、政府は水循環に関する施策を年次報告としてまとめています。令和7年版の「日本の水資源の現況」は、国土交通省が日本の水資源の状況をまとめて毎年公表している資料です。

世界の水と衛生の課題とのつながりは、次の記事でも確認できます。

保全行動を「蛇口・食卓・地域」の3つの距離で選ぶ

ここからは、読者が実際に動くための整理です。保全行動を、水との距離で3つに分けてみます。蛇口は一番近く、食卓は少し離れ、地域は最も広い範囲です。どれが正解という話ではなく、いまの生活で続けやすい距離から選ぶための整理だと考えてください。

蛇口の距離 毎日の水の使い方を見直す

蛇口の距離は、最も手がつけやすい範囲です。歯みがきや食器洗いで水を流しっぱなしにしない、お風呂の残り湯を洗濯や掃除に回す、といった行動が当てはまります。

ただ、最初から全部を変えようとすると続きません。自分の家庭でどの場面の水使用が多いのかを知ると、効果の大きいところから絞り込めます。水道事業者が使用量の内訳の目安を公表している場合があるので、地元の水道局のサイトを確認してみてください。

食卓の距離 食べ物に含まれる水を意識する

食卓の距離は、普段目に見えない水の話です。食べ物や工業製品は、育てたり作ったりする過程で大量の水を必要とします。輸入された食料などを通じて、日本は海外の水資源にも支えられていると言われます。この考え方は「バーチャルウォーター」と呼ばれます。

だから、食品ロスを減らすことは水の保全にもつながります。捨てられる食べ物には、それを育てるのに使われた水も含まれているからです。買いすぎない、使い切る、食べ切る。この3つは、食卓の距離でできる保全行動になります。具体的な水量は食品や産地、試算の方法で大きく変わるので、数字を比べるより「食べ物の背後に水がある」と意識するところから始めるのが現実的です。

地域の距離 水源や流域に関わる

地域の距離は、暮らす場所の水源や川、地下水に関心を向けることです。自分の水道水がどの川やダム、地下水から来ているかを調べると、水が急に身近になります。

各地では、自治体や企業、地域団体が水源林の整備や、水田を使った地下水の涵養などに取り組んでいると報じられています。参加できる機会があれば、植林や清掃活動、地域の水に関する学習会に足を運ぶのも一つの方法です。8月1日の「水の日」や、その週の関連行事は、こうした機会を探すきっかけになります。

今日の1アクション|自分の水道水の出どころを調べる

最後に、今日から試せる行動を一つに絞ります。おすすめは、自分の水道水がどこから来ているかを調べることです。節水の行動を増やす前に、水の出どころを知っておくと、その後の選び方が変わります。

調べ方は難しくありません。「お住まいの市区町村名+水道局+水源」で検索すると、多くの自治体が水源の種類(河川水、ダム、地下水など)を公開しています。見つけたら、その水源がどの地域にあるかを地図で確かめてみてください。

もう一歩進めたいときは、水源のある地域の名前を覚えておくだけで構いません。ニュースで渇水や大雨の話題が出たとき、自分の水に関わる話として受け取れるようになります。成果を急ぐ必要はありません。まず水の出どころを一つ知るところから始めてみてください。

まとめ

日本は降水量が多く水が豊かな国ですが、河川の流量の変動が大きく、安定して使える水を保つには施設・水源・使い方の管理が欠かせません。使用量の内訳を見ると、農業用水が約7割を占めます。保全は家庭の節水だけの話ではなく、社会全体で考える課題だと分かります。

保全の論点は「量」「質」「水を育てる仕組み」の3つに分けられ、暮らしの中では蛇口・食卓・地域の3つの距離から関われます。すべてを同時にやる必要はありません。続けやすい距離を一つ選ぶことが、現実的な第一歩になります。

  • 日本の年間降水量は約6,600億m³で、実際の水使用は2019年の取水量ベースで約785億m³とされる
  • 使用量の内訳は農業用水が最も大きく、家庭の節水だけでは全体像を捉えきれない
  • 保全は「量」「質」「水を育てる仕組み(森・農地・地下水)」の3つで考えると整理しやすい
  • 行動は蛇口・食卓・地域の3つの距離から、続けやすいものを選ぶ
  • まずは自分の水道水の出どころを調べるところから始められる

参考文献

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