ゼロウェイストの町とは、焼却や埋め立てに回すごみを限りなくゼロに近づけようとする自治体のことです。日本では徳島県上勝町と鹿児島県大崎町がよく知られています。ごみが一切出ない魔法の町ではありません。住民の手間と、行政が積み上げてきた制度設計で成り立っています。この記事では、二つの町の仕組みの違いを環境省の最新データで確かめます。そのうえで、都市部に住む人が「うちは分別が少ないから関係ない」と感じたときの次の一歩を考えます。
数字で見る「ゼロウェイストの町」の現在地
感動的なエピソードで語られがちな二つの町ですが、まず公的な数字で位置づけを確認します。
全国平均19.3%に対して、町は75%を超えている
環境省が2026年3月27日に公表した令和6年度の調査では、全国のリサイクル率は19.3%(前年度19.5%)、1人1日あたりのごみ排出量は839グラムでした。ごみ総排出量は3,811万トン、最終処分量は306万トンです。
鹿児島県が公表している令和6年度の市町村別順位では、人口10万人未満の区分で大崎町が82.7%で1位、上勝町が76.1%で2位、鹿児島県志布志市が75.8%で3位でした。全国平均の約4倍にあたる水準を、人口の少ない町が保っていることになります。
「ゼロ」は目標であり、状態ではない
上勝町は2003年に日本の自治体で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。町の説明では、2020年にリサイクル率80%を達成したとされています。令和6年度の調査値76.1%とは数字が違いますが、算出の対象や方法が同じとは限らないため、単純には比べられません。
大切なのは、どの町も「ごみがゼロになった」とは言っていない点です。焼却や埋め立てに頼る量を減らし続ける、という方向性を示す言葉だと受け取ると、次の節以降が読みやすくなります。
人口規模で見ると、都市部の基準は別にある
同じ調査には、人口規模別の順位もあります。人口10万人以上50万人未満では神奈川県鎌倉市の59.8%、50万人以上では千葉市の34.3%が1位でした。町村の80%台をそのまま都市の目標にすると、かえって動けなくなります。自分の暮らす規模の自治体がどのあたりにいるのかを知るほうが、現実的な出発点になります。
上勝町の「13種類45分別」は何のためにあるのか
上勝町は人口1,368人(2024年4月時点)、面積の約9割が山林の町です。ごみ収集車が家庭を回る仕組みはなく、住民が自分で分別したごみをゴミステーションに持ち込みます。
手間の多さではなく、売れる品質をつくるための細かさ
三井物産のコラムによると、現在の分別は13種類45分別です。1997年ごろの初期は9種類で、焼却炉を閉鎖した際に22種類へ増やし、その後に少しずつ細分化されてきました。一般家庭から出るごみは、おおむね9〜10種類に収まるとも紹介されています。
分別を細かくするのは、資源として売却や再利用がしやすい品質にするためです。焼却炉を持たないという町の選択を成り立たせる手段であり、「細かいほど偉い」という話ではありません。同コラムでは、住民の多くが「数は多いけれど慣れれば大丈夫」と受け止めているとされています。
ゼロ・ウェイストセンターという拠点
町の中核施設ゼロ・ウェイストセンターは、ゴミステーションとリユース品の交流の場、体験型ホテル「HOTEL WHY」が一体になった施設です。2020年に改修され、町民の家で使われていた窓や家具を組み合わせて造られたと紹介されています。宿泊者が客室で出たごみを分別体験できる点も特徴です。
視察者は年間約2,000人、移住者は年間40〜50人程度とされます。ごみ処理の仕組みが、人を呼ぶ町の魅力にもなっているわけです。
高齢化という課題と、2025年の新しい動き
住民が持ち込む方式は、高齢の方や運搬が難しい世帯には重い負担になります。この課題に対し、2025年10月15日にリネットジャパンリサイクル(愛知県大府市)と上勝町が小型家電リサイクルの連携協定を結んだと発表されました。宅配便で小型家電を回収する仕組みを、行政として導入するものです。徳島県内では初の取り組みとされています。
先進地でも仕組みは固定ではなく、住民の暮らしの変化に合わせて更新が続いています。続けられる設計かどうかを問い直す姿勢は、他の自治体が学べる点です。
大崎町は「生ごみと草木」を軸に資源化している
鹿児島県大崎町は、上勝町とは違う方向から高い数字に到達しています。
焼却炉を持たず、埋立処分場を延命する道を選んだ
大崎町は焼却施設を持たない町です。埋立処分場の残余年数が逼迫したとき、焼却炉の建設、新しい処分場、既存処分場の延命の三つの案を検討し、分別ルールの徹底で延命する道を選んだと紹介されています。分別は1998年に缶・ビン・ペットボトルの3品目から始まり、現在は27〜28品目とされます。2024年4月に紙おむつが分別品目に加わったとする資料もあり、資料によって数え方が違うため、最新の品目数は町の案内で確認してください。
家庭ごみの6割を占める有機物に向き合う
町の紹介資料では、家庭ごみの内訳は生ごみや草木が約60%、資源ごみが約23%、一般ごみが約17%とされています。ごみの大半を占める有機物を堆肥にすることが、リサイクル率を押し上げる鍵です。令和6年度の82.7%という数字も、この設計と無関係ではありません。
上勝町が品目の細かさで資源の質を高める「徹底分別型」だとすれば、大崎町は有機物の循環に重心を置く「堆肥化型」だと整理できます。
仕組みは海外にも輸出されている
大崎町は、JICAの草の根技術協力事業などを通じて、インドネシアに生ごみの分別と堆肥化のノウハウを伝えてきました。バリ州では、2022年1月から2025年1月までの3年間、技術移転のプロジェクトが実施されています。人口や気候の違う地域にも応用できる要素があることを示す事例です。
二つの町の違いと、よくある三つの誤解
ここまでの内容を並べると、誤解されやすい点が見えてきます。
誤解1「分別が細かい町ほどすごい」
上勝町は45分別、大崎町は27〜28品目で、より少ない品目の大崎町のほうが令和6年度のリサイクル率は高い結果でした。品目数の多さは成果の物差しではなく、地域の資源の売り先や有機物の使い道に合わせた設計の結果です。
誤解2「田舎だからできた」
人口が少ないことは、合意形成のしやすさという意味で追い風でしょう。一方で、鎌倉市(59.8%)や千葉市(34.3%)のように、人口規模の大きな自治体でも全国平均を大きく上回る例があります。町の規模だけで説明しきれるものではありません。
誤解3「住民の努力だけで成り立っている」
上勝町が宅配便による回収を導入した例が示すとおり、個人の頑張りに頼り切る仕組みは続きません。受け皿となる分別区分、拠点、回収の方法を行政が整えて、はじめて個人の行動が成果につながります。
都市部に住んでいても取り入れられること
「うちの自治体は焼却が前提だから関係ない」と感じた方も、確認できることがあります。
自分の自治体の数字を一度見てみる
環境省の一般廃棄物処理実態調査では、市町村ごとのリサイクル率やごみ排出量が公開されています。全国平均19.3%と自分の自治体を比べてみると、足りない部分が具体的に見えます。数字が低くても、その自治体が何を回収していないのかが分かれば、働きかけるべき点も明確になります。
生ごみと衣類・日用品の「捨てる前の一呼吸」
大崎町の例が示すように、家庭ごみで重いのは生ごみです。買い過ぎない、使い切る、冷凍や保存で傷ませないといった工夫が、排出量を減らす最初の一歩になります。衣類や日用品は、捨てる前にリユースや修理の選択肢を一つ探してみてください。
回収の仕組みを知れば、選べる行動が増える
上勝町と連携した小型家電の宅配便回収のように、自治体と民間事業者の連携で使える回収サービスは広がっています。住んでいる地域で、小型家電や古着の回収ルートが用意されていないか、自治体の案内で確認してみてください。
年末の大掃除に向けて、今から試せる三つの行動
10月の今は、年末の大掃除で一気にごみが出る前に、準備を始めやすい時期です。無理のない範囲で、次の三つから選んでみてください。
分別ルールを最新版で見直す
自治体の分別表は年度ごとに更新されることがあります。大崎町が紙おむつを品目に加えたように、ルールは変わります。古いチラシのまま判断せず、公式サイトの最新版を一度開いてみましょう。
捨てる前に「戻せる先」を探す
不要品は、リユースショップ、自治体の拠点回収、修理店などの出口を先に確認します。出口が見つからなかったものだけを捨てる、という順番に変えてみてください。
自治体の説明会やアンケートに目を通す
ごみ処理の計画は、住民向けの説明やアンケートを経て決まります。意見を伝える機会があれば、分別しやすさや回収方法についての感想を一言添えてみてください。町の事例が示すように、仕組みを動かすのは住民の声と行政の設計の両方です。
まとめ
上勝町と大崎町は、それぞれ違う方法で高いリサイクル率を実現しています。令和6年度の調査では全国平均19.3%に対し、大崎町が82.7%、上勝町が76.1%でした。上勝町は細かい分別で資源の質を高め、大崎町は生ごみと草木の堆肥化を軸にしています。共通しているのは、焼却や埋め立てに頼らない方針を決め、住民が続けられる形に仕組みを整え続けている点です。
また、先進地でも課題は残っています。上勝町では高齢化に伴う運搬の負担に対し、2025年に宅配便を使った小型家電の回収が始まりました。仕組みを更新し続けることも、ゼロウェイストの一部と言えます。
都市部に暮らす私たちにできるのは、制度をそのまま真似ることよりも、捨てる前に立ち止まる習慣を持つことです。まずは今日、自治体の分別表を一度開いてみてください。
- 令和6年度の全国リサイクル率は19.3%。大崎町82.7%、上勝町76.1%は、その約4倍の水準にある
- 上勝町は13種類45分別で資源の質を高め、大崎町は生ごみと草木の堆肥化を軸に資源化している
- 個人の努力だけでなく、拠点や回収方法を整える行政の設計が成果を支えている
- 都市部では、自治体の数字と最新の分別ルールを確認することが出発点になる
- 年末の大掃除前に、捨てる前の「戻せる先」を一つ探すことから始められる
参考文献
- 環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」(2026年)
- 鹿児島県「リサイクル率に関するページ」(令和6年度データ)
- 三井物産「世界が注目する徳島・上勝町『ゼロ・ウェイスト宣言』」(2024年)
- LOGI TODAY「リネットジャパンリサイクル、徳島県上勝町と小型家電リサイクルで連携協定」(2025年)

