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ENVIRONMENT

サステナ建築に木材が選ばれる理由|国産材CLTと企業事例から考える木造化のいま

Photo by James Lee on Unsplash

環境NGOでキャンペーンの企画に携わっていたころ、「森を守るなら木を使うな」という声と、「森を守るには木を使うべきだ」という声の両方を、同じ会議室で聞いたことがあります。一見矛盾するこの二つの主張は、実は木材の使い方次第でどちらも正しくなり得るというのが、木造建築の分野を取材していて実感したことです。この記事では、なぜ木材が脱炭素時代の建築材料として注目されているのか、日本の制度や企業の事例、そして読者が暮らしの中で木材と向き合うときの視点を整理します。

なぜ「木を使う建築」が気候変動対策になるのか

木材がサステナブルな建材とされる最大の理由は、樹木が成長する過程で光合成によって大気中のCO2を吸収し、伐採後もその炭素を木材の中に貯蔵し続けるという性質にあります。鉄骨やコンクリートは製造時に大量のエネルギーを要し、その過程で相応のCO2を排出しますが、木材はその生産工程が比較的省エネルギーであるうえ、建材として使われている間は炭素を「固定」したままにできると説明されています。つまり木造建築は、建てば建てるほど大気中の炭素を建物の中に留め置く「炭素の貯金箱」のような役割を果たすという見方です。

ただし、これは「木を切れば切るほど環境に良い」という単純な話ではありません。伐採した分の森林を計画的に再生・育林し、次の世代の木がまた炭素を吸収する循環をつくって初めて、この理屈は成立します。管理されずに伐採だけが進む森林では、炭素の吸収源そのものが失われてしまいます。取材の中で林業関係者から繰り返し聞いたのは、「木を使うことと森を守ることは、セットで考えないと意味がない」という指摘でした。

日本の制度が後押しする木造化|都市の木造化推進法

日本では2010年に公共建築物での木材利用を促す法律が制定され、2021年の改正で対象が公共建築物だけでなく一般の建築物にも広げられたと報じられています。改正後の法律は「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」という名称になり、通称として「都市(まち)の木造化推進法」と呼ばれることがあります。この改正の背景には、建築分野を脱炭素対策の一つの柱として位置づけたい国の方針があるとされています。

制度が変わったことで、これまで鉄骨造・鉄筋コンクリート造が当たり前だった中高層のオフィスビルや商業施設でも、木造・木質化を検討する設計者が増えてきたと業界の動きから見て取れます。実際に、後述するように大手ゼネコンや住宅メーカーが相次いで木造の高層建築や大規模木造施設を手がけるようになっており、法制度と技術開発が同じ方向を向いて進んでいる時期だと感じています。

企業の木造化事例に見る技術の進化

木材を高層建築や大規模施設に使うための技術も進化しています。代表的なのが「CLT(直交集成板)」と呼ばれる木質パネルで、板を繊維方向が直交するように重ねて接着することで、コンクリートに匹敵する強度と寸法安定性を持たせた建材です。CLTは2013年に日本農林規格(JAS規格)が制定されたことで国内での普及の土台ができたとされ、その後の建築基準法関連の告示整備を経て、実際の建築物への採用が進んできました。

複数の企業の取り組みを並べてみると、木造化がどの規模まで実用段階に来ているかが見えてきます。大林組は横浜市に「Port Plus」という高さ約44メートル・地上11階建ての施設を手がけており、国内最大規模級の純木造耐火建築物と位置づけられていると報じられています。住友林業は創業350周年にあたる2041年を見据えて、高さ350メートル級の木造超高層ビルを構想する「W350計画」を2018年に発表しました。2025年の大阪・関西万博会場では、木造の大屋根「リング」が建設され、木造建築物として世界最大級との評価を受けたと伝えられています。さらに2019年に完成した新国立競技場は、47都道府県から集めた木材を庇や軒に使用し、木と緑を基調にしたスタジアムとして知られています。

これらの事例に共通するのは、「木材だから強度が低い・燃えやすい」という従来のイメージを、耐火実験や構造設計の積み重ねで覆してきた点です。実際に建築系のセミナーで木造耐火の実験映像を見せてもらったとき、木材が表面から炭化することで内部の燃焼を遅らせる仕組みを初めて知り、木造=燃えやすいという自分の思い込みを反省した記憶があります。企業ごとに採用する工法や規模は異なりますが、木造化の選択肢が「戸建て住宅」から「都市の高層建築」まで広がっているという流れは共通して読み取れます。

木材ならなんでもサステナブルというわけではない

ここで見落としがちなポイントとして、「木材を使っている=サステナブル」と単純に等号で結んでよいわけではないという点があります。出どころが不明な木材や、違法伐採によって伐り出された木材が使われていれば、むしろ森林破壊を後押ししてしまう可能性があります。この違いを見分けるための仕組みが森林認証制度です。

国際的に広く知られているのがFSC(森林管理協議会)認証とPEFC(森林認証プログラム)認証で、どちらも第三者機関が適切に管理された森林から生産された木材であることを認証する仕組みです。日本国内には、国内の森林管理の実情に合わせて設計されたSGEC(緑の循環認証会議)という独自の認証制度もあり、後にPEFCと相互承認される関係になったとされています。認証マークが付いているかどうかは、消費者や発注者が木材の出どころをある程度確認できる数少ない手がかりです。

もう一つ見落としがちなのが、国産材か輸入材かという視点です。日本の木材自給率は2000年代初頭に大きく落ち込んだ後、近年は回復傾向にあるとされていますが、依然として住宅建材の多くを輸入材に頼っている実態があります。輸送にかかるエネルギー消費や、国内の森林が手入れされずに荒れてしまう「放置林」の問題を考えると、国産材を選ぶこと自体が地域の森林管理を支える行動になり得ます。とはいえ、輸入材のすべてが問題というわけでもなく、輸出国側でも認証制度が整備されているケースは増えています。大切なのは「国産か輸入か」の二択で決めつけず、認証の有無や調達経路を確認する姿勢だと考えています。

読者が暮らしの中で木材と向き合うときの視点

筆者自身、以前に木製家具を選ぶ際、店員に「これはどこの木材ですか」と尋ねたところ即答してもらえず、産地証明を確認するまでに数日かかったことがあります。この経験から感じたのは、木材の調達経路を尋ねること自体が、まだ多くの現場で「特別な質問」として扱われているという現実です。逆に言えば、こうした質問を消費者が当たり前にすることが、事業者側の情報開示を後押しする一歩にもなります。

住宅の新築やリフォームを検討している場合は、設計者や工務店に対して、使用する木材がFSC・PEFC・SGECいずれかの認証を受けているか、あるいは国産材の産地がどこかを尋ねてみることができます。家具や内装材を選ぶ場合も同様に、認証マークの有無や産地表示を確認する習慣をつけることで、木材の調達先に関心を持つ消費者が増えていることを事業者側に伝えるシグナルになります。また、自治体によっては公共施設の木造化事例を公開しているところもあるため、近隣の木造公共建築を見学してみると、木材がどのように使われているかを具体的にイメージしやすくなります。

今日からできる一つのアクションとして、次に家具や住宅設備のカタログを開く機会があれば、木材の産地表示や認証マークの欄をまず探してみることをおすすめします。表示がない場合は、販売店に一言尋ねてみるだけでも、木材の調達に対する意識を持つきっかけになります。

まとめ

木材を使った建築は、計画的な森林管理と組み合わさって初めて気候変動対策として機能します。法制度の後押しや企業の技術開発によって木造化の選択肢は広がってきましたが、木材であれば何でもサステナブルというわけではなく、認証や調達経路を確認する視点が欠かせません。まずは身近な木製品の産地表示を確認するところから始めてみてください。

  • 木材は成長過程でCO2を吸収し、建材として使われている間も炭素を貯蔵し続けるとされる
  • 2021年改正の法律により、木材利用の促進対象が公共建築物から一般建築物にも広がった
  • CLTなどの技術開発により、木造化は戸建て住宅から高層建築まで選択肢が広がっている
  • FSC・PEFC・SGECなどの森林認証や産地表示を確認することが、消費者にできる見分け方になる

本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。

参考文献

  • 林野庁「木材利用の促進について」(林野庁公式サイト、https://www.rinya.maff.go.jp/)
  • 国土交通省「都市の木造化推進法(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)」(国土交通省公式サイト、https://www.mlit.go.jp/)
  • 大林組「Port Plus(木造耐火建築物)」(大林組公式サイト、https://www.obayashi.co.jp/)
  • 住友林業「木造超高層建築物研究プロジェクト W350計画」(住友林業公式サイト、https://sfc.jp/)

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