日本では毎年、食べられるのに捨てられる「食品ロス」が大量に発生しています。2025年3月、政府はその削減目標を引き上げた新たな基本方針を閣議決定しました。目標は達成できるのか。そして、私たちひとりひとりに何が求められているのでしょうか。
令和5年度の食品ロスは約464万トン
環境省の発表によると、令和5年度の食品ロス量は約464万トン(うち家庭系約233万トン、事業系約231万トン)と推計されています。
「食品ロス」とは、
本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品のこと
です。国際的には、SDGsのターゲットの一つとして2030年までに世界全体の一人当たりの食品廃棄を半減させることが掲げられており、日本でも国民運動として削減の取り組みが進んでいます。
ピーク時と比べると削減は進んでいます。しかし、464万トンという数字を365日で割ると、1日あたり約1,270万食分に相当するとされており、依然として解決すべき課題です。
日本人ひとり当たりの食品ロス量は年間37キログラム
にのぼるとされています。
第2次基本方針が示す「強化された目標」
消費者庁によると、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」の第2次基本方針が、令和7年(2025年)3月25日に閣議決定されました。
この第2次方針では、削減目標が一段と強化されています。
家庭系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに半減(2030年を待たずに早期達成)、事業系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに60%削減することが目標として定められました。
事業系については、
令和4年度時点で事業系食品ロス量は236万トンとなり、従来の「2030年度までに2000年度比半減(273万トン)」という目標をすでに達成
していました。この達成を受け、第2次方針では目標をさらに引き上げ、60%削減という水準を新たな到達点として設定したわけです。
一方、家庭系については依然として課題が残っています。事業者の努力による事業系の削減に比べ、家庭での食べ残しや食材の廃棄は個人の意識と行動に依存する部分が大きいためです。
「1/3ルール」見直しと食べ残し持ち帰りの広がり
食品ロス削減に向けた取り組みで注目されているのが、長年続いてきた商慣習の見直しです。
食品ロス削減にとって重要とされる「3分の1ルール」をはじめとする商慣習の見直しとして、厳しい納品期限の緩和、賞味期限表示の大括り化と延長、発注から納品までの期間の延長などが推進されています。
「3分の1ルール」とは、製品の賞味期限を3等分し、製造から賞味期限の3分の1が過ぎた時点でメーカーから卸への納品を打ち切り、さらに3分の2が過ぎた時点で小売から撤去するという慣行です。この慣行のために、まだ十分に食べられる食品が大量に廃棄されてきたという見方があります。
賞味期限表示の大括り化(年月表示・日まとめ表示)、安全係数の見直しや容器包装の工夫による賞味期限の延長、及び厳しい納品期限の緩和を一体的に促進する
方向が、第2次方針でも引き続き明確に示されています。
また、外食での食べ残し持ち帰りについても動きがあります。
「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン〜SDGs目標達成に向けて〜」が令和6年(2024年)12月25日に公表されました。
これは飲食店での食べ残しをお客が持ち帰る「mottECO(モッテコ)」と呼ばれる取り組みを後押しするものです。食中毒リスクなど安全面への懸念から普及が進まなかった食べ残し持ち帰りについて、衛生管理のルールを明確にし、広く推進を図る狙いがあります。
企業・自治体・消費者、それぞれに求められること
食品ロス削減推進法が目指すのは、国民運動としての食品ロスの削減推進です。第2次基本方針では、2030年度までに、2000年度比で家庭系食品ロス量を半減、事業系食品ロス量を60%削減する目標を設定
し、農林水産省・環境省・消費者庁を中心に関係省庁が連携して取り組みを進めています。
事業者に対しては、
フードバンク等への食品寄附量や食品循環資源の再生利用などの食品ロス削減の取り組みに関する情報を、有価証券報告書や統合報告書で開示を行う企業もある
など、取り組みの「見える化」も進んでいます。
自治体については、
第2次基本方針(令和7年3月25日閣議決定)に基づき、都道府県及び市区町村が食品ロス削減推進計画を策定するよう求められており、環境省が「地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアル」を作成・公表しています。
消費者ができることとしては、冷蔵庫の中の食材を把握して計画的に買い物をすること、賞味期限と消費期限の違いを理解して食材を使い切ること、外食での食べ残しをできる限り減らすことなどが挙げられます。
また、消費者庁の資料によると、関係省庁が「食品ロス削減」「食品寄附促進」「食品アクセスの確保」に向けた取り組みを一体的に推進する「食の環(わ)」という概念を定め、共通のロゴマークを使用してワンボイスで発信していくこととしています。
「まだ食べられる」を守る選択が未来をつくる
食品ロスは単なる「もったいない」の問題にとどまりません。食べ物を生産・流通・廃棄する過程では大量のエネルギーと温室効果ガスが排出されており、食品ロスの削減は気候変動対策にも直結します。
第2次基本方針が示した新たな目標達成に向けて、政府・事業者・消費者が三位一体で取り組むことが求められています。私たちの食卓での小さな選択が積み重なったとき、社会全体の食料システムは確実に変わっていきます。賞味期限が近い商品を選んで購入する、買った食材を使い切る、外食で無理のない量を注文する——そうした一つひとつの行動が、2030年という目標年限に向けた大きな力となります。

