日本の新車販売に占める電気自動車(EV)の割合は、2025年も3%に届きませんでした。世界全体の約25%と比べると、大きな開きがあります。この差は「日本が遅れている」の一言では片づけられず、ハイブリッド車(HV)の強さ、充電器の数、価格、電気の作られ方が重なって生まれています。
この記事では、国際エネルギー機関(IEA)、経済産業省関連の報道、日本経済新聞などの公開データをもとに、日本のEVの現在地を数字で確認します。そのうえで、購入を検討するときに迷いやすい点を、判断の分かれ目として整理します。
日本のEV販売は、数字で見るとどこにいるのか
まず現在地を確認します。結論から言うと、日本のEV販売は2年連続で伸び悩んでいます。
新車販売に占める割合は1〜3%台
IEAの「Global EV Outlook 2026」によると、日本の電気自動車の販売は2025年も弱く、台数は2024年と同水準の10万台強でした。新車販売に占める割合は3%未満です。一方、通常のHVは新車販売の約3分の1を占めています。
日本経済新聞の報道では、2025年1〜6月の国内EV販売(軽自動車を含む)は2万7,321台で、前年同期比7%減でした。新車全体に占める比率は1.4%で、前年同期より0.2ポイント下がっています。年間でも、EVが大きく伸びたとは言いにくい状況です。
世界との差は約20ポイント
IEAは、2025年の世界の電気自動車販売が2,000万台を超え、新車販売に占めるシェアが約25%に達したと報告しています。日本の3%未満との差は20ポイント以上です。ただし、このシェアにはプラグインハイブリッド車(PHEV)も含まれます。比較するときは、どの車種を数えているかを揃える必要があります。
「EVシェア」は数え方で数字が変わる
日本のEVシェアとして報じられる数字は、1%台から2%台までばらつきます。理由は、次の3つの定義が混在しているためです。
- バッテリーEV(BEV)だけを数えるか、PHEVも含めるか
- 軽自動車を含めるか、登録乗用車だけで見るか
- 半年・年間・単月のどの期間で見るか
記事や統計を読むときは、まず分母と分子の範囲を確認してください。シェアの数字を見比べても、定義が違えば意味が変わります。
日本でEVが伸びにくい3つの構造
EVが伸びにくい要因は、大きく3つに分けられます。
HVという強い選択肢がある
日本では、トヨタやホンダなどが長年磨いてきたHVが、新車販売の約3分の1を占めています。燃費が良く、充電の手間もありません。EVを選ぶ理由が「燃費」だけなら、HVで足りると考える人が多くても不思議ではありません。
政府は2035年までに乗用車の新車販売で「電動車100%」を目指しています。ただし、この「電動車」にはHVも含まれます。EVだけを指す目標ではない点は、誤解されやすいところです。
充電器は目標の4分の1以下
経済産業省は2023年10月に「充電インフラ整備促進に向けた指針」を策定し、2030年までの設置目標を15万口から30万口へ引き上げました。急速充電器は約3万口を目指しています。
報道によると、2025年3月末時点の充電器は約6万8,000口でした。内訳は急速約1.2万口、普通約5.6万口で、1年間に約2.8万口増えています。30万口に対する達成率は約23%です。
2030年までの残り約5年で換算すると、30万口に届くには年間約4.6万口の増設が必要です。直近の年間増設数の約1.7倍にあたります。これは公表数字から筆者が単純計算した値で、実際の増え方は設置場所や補助制度の影響を受けます。
補助金は増額されたが、実額は車種ごとに違う
CEV補助金は、2026年1月から見直されました。EVの上限額は従来の90万円から130万円に、PHEVは60万円から85万円に引き上げられています。軽EVは58万円のままです。見直しの背景には、米国との関税交渉で、EVとFCV(燃料電池車)の補助額の差が論点になったことがあります。
130万円は上限額で、実際の交付額は車種ごとに決まります。ここを見落とすと、「130万円もらえる」と思い込んでしまいます。補助額は、次世代自動車振興センターの銘柄別の一覧で確認できます。
EVは本当に環境に良いのか|ライフサイクルで見る判断軸
「EVは走行中にCO2を出さない」という点は事実です。それでも、「EVを買えば環境に良い」と断定するのは、グリーンウォッシングにつながりかねません。製造から廃棄までを通したライフサイクルで見る必要があります。
製造段階はEVの負荷が大きい
EVは大容量のバッテリーを積むため、車を作る段階のCO2排出量はガソリン車より多いとされています。つまりEVは、製造時に「CO2の借り」を作り、走って電気を使いながら返していく乗り物です。
日本の電源構成が結果を左右する
走行段階では、充電に使う電気の中身が効いてきます。日本は火力発電の比率が高く、電気をつくる側でCO2が出ています。そのため、日本の電源を前提にした試算の結論は、前提条件によって次のように割れます。
- 走行距離が長いほど、EVはガソリン車に対して有利になる
- HVとの比較では、EVと同程度とする試算もある
- 電源の脱炭素化が進めば、EVの優位性は高まると見込まれる
EVの環境価値は、車だけでは決まりません。どれだけ走るか、どんな電気で充電するかが、結果を動かします。
比較するときは「何と比べるか」を確認する
「EVはガソリン車より排出が少ない」という主張は、比べる相手がHVなのか、走行距離は何kmなのか、電源はどの想定なのかで変わります。数字を見かけたら、この3点を確認してください。前提が書かれていない比較は、参考程度にとどめるのが安全です。
EV検討で判断が分かれる3つの分岐
EVを検討する人が迷う場面は、パターン化できます。ここでは公開されている情報の傾向をもとに、判断の分かれ目を3つに整理します。個別の相談や調査結果を示すものではなく、検討の手順としての整理です。
自宅や職場で普通充電できるか
最初の分岐は、日常的に充電できる場所があるかどうかです。普通充電器は、全体の約8割を占めます。自宅の駐車場で充電できる人は、ガソリンスタンドに行く手間がなくなります。賃貸の集合住宅などで設置できない場合は、外出先の急速充電に頼ることになり、使い勝手が大きく変わります。
年間走行距離と使い方
2つ目の分岐は、走行距離と用途です。ライフサイクルのCO2では、走行距離が長いほどEVに有利です。一方で、年間の走行距離が短く、近距離の移動が中心なら、HVや軽自動車のほうが合う場合もあります。長距離を頻繁に走る人は、急速充電器の位置と待ち時間も確認が必要です。
電気の中身を選べるか
3つ目は、充電に使う電気です。再生可能エネルギー由来のプランに切り替えたり、自宅で太陽光発電を使ったりできれば、EVの環境価値は高まります。反対に、電気の中身を変えられない場合は、EVの導入だけでCO2が大きく減るとは限りません。
今日から試せる1つの行動
EVを買うかどうかを今すぐ決める必要はありません。まず試してほしいのは、「自宅と職場の駐車場で充電できるか」を確認し、直近1年の走行距離を概算でメモすることです。
確認の方法は簡単です。自宅が戸建てなら、駐車場の近くにコンセントや分電盤があるかを見ます。集合住宅なら、管理規約や管理会社に、充電設備の設置や共用充電器の有無を問い合わせます。走行距離は、車検証や点検記録の走行距離から、1年あたりを割り出せます。
この2つが分かると、EVが自分の暮らしに合うかどうかの目安が立ちます。そのうえで、補助金の銘柄別一覧と見比べると、候補に残る車種が絞られます。まず1つだけ、駐車場の確認から試してみてください。
まとめ
日本のEV販売は、2025年も新車の3%未満にとどまり、世界平均の約25%を大きく下回っています。背景には、HVの強さ、充電器が2030年目標の約4分の1にとどまる現状、補助金を使ってもなお残る価格の壁があります。
一方で、EVの環境価値は「EVだから良い」と一括りにはできません。製造段階の負荷、走行距離、電源構成によって、ガソリン車やHVとの差は変わります。補助金は2026年1月に増額されましたが、上限額と実際の交付額は別物です。
数字を見るときは、定義と前提を確認する。自分の暮らしでは、充電場所・走行距離・電気の中身の3点を確認する。この順番で見ていくと、流行や印象に流されず、納得できる選択に近づけます。
- 日本のEVシェアは1〜3%台で、BEV・PHEV・軽自動車の含め方で数字が変わる
- 充電器は約6.8万口(2025年3月末)で、2030年の30万口目標までは年約4.6万口の増設が必要
- CEV補助金のEV上限は2026年1月から130万円だが、実額は車種ごとに決まる
- EVのCO2削減効果は、走行距離と電源構成で変わる
- まず自宅・職場の充電可否と年間走行距離を確認する
参考文献
- IEA「Global EV Outlook 2026 Trends in electric cars」(2026年)
- 日本経済新聞「国内新車販売の1〜6月、EVは2年連続減 シェアは1%」(2025年)
- 経済産業省「充電インフラ整備促進に関する取組」
- ABA-J「国内のEV充電網、6万8千口に 1年で1.7倍 まだ遠い2030年30万口の政府目標」(2025年)
- ABA-J「政府、2026年1月からCEV補助金見直し 関税合意を踏まえ EV、PHVは増額」(2025年)

